問題
関数\(g(x)\)および\(f_k(x)\ \ (k = 1, 2, 3, \cdots)\)を次のように定義する。$$\begin{eqnarray}g(x) & = & \begin{cases}\displaystyle \frac{2}{3}x^3-\frac{5}{3}x\ \ (|x|\leq 2)\\ x \ \ (|x| > 2)\\ \end{cases}\\ f_k(x) & = & g(x-k)+k \end{eqnarray}$$正の定数\(k, l\)に対し、整数の組を要素とする集合\(S_k\)および\(T_{k, l}\)を次のように定義する。$$\begin{eqnarray}S_k & = & \{(m, n) | m, n \text{は整数、}m\ne n, f_{k}(m) = n\}\\ T_{k, l} & = & \{(m, n) | m, n \text{は整数}, m\ne n, f_{l}(f_{k}(m)) = n\}\end{eqnarray}$$このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(S_k = \{(k-1, k+1), (k+1, k-1)\}\)となることを示せ。
\((2)\) \(T_{3, 4}\)を求めよ。
\((3)\) \(T_{3, k}\ne S_{3}\cup S_k\)を満たす整数\(k\)を求めよ。
\((4)\) \(T_{3, k}\ne T_{k, 3}\)を満たす整数\(k\)を求めよ。
方針
至極簡単な問題と感じた受験生と、とてつもない難問に感じた受験生に分かれるかもしれない。実験が大切で、具体的に紙に例を書いていけば少しずつ問題の構成が見えてくる。
解答
\((1)\) \(|m-k| > 2\)のとき、$$\begin{eqnarray}f_{k}(m) & = & g(m-k) + k\\ & = & (m-k) + k \\ & = & m\end{eqnarray}$$となるから、集合\(S_k\)の条件\(m\ne n\)から\(|m-k|\leq 2\)しかありえない。\(m, k\)は整数であるから、\(m-k = -2, -1, 0, 1, 2\)のいずれかである。下の表から、\begin{array}{|c|*4{c|}}\hline m-k & g(m-k) & f_k(m) & m \\ \hline -2 & -2 & -2+k & -2+k \\ -1 & 1 & 1+k & -1+k\\ 0 & 0 & k & k \\ 1 & -1 & -1+k & 1+k \\ 2 & 2 & 2+k & 2+k\\ \hline \end{array}条件\(m\ne n\)を満たすのは\((m, n) = (k-1, k+1), (k+1, k-1)\)であることがわかる。以上より題意が示される。
\((2)\) \((1)\)から\(f_k(m)\)は\(k-1\)と\(k+1\)を入れ替えることがわかる。したがって、\(f_3(m)\)は\(2\)と\(4\)を、\(f_4(m)\)は\(3\)と\(5\)を入れ替える。より厳密にいうと、\(f_k(m)\)は\(a_1, a_2, \cdots, a_{k-1}. a_k, a_{k+1}, \cdots\)という整数の並びがあるとき、これを\(a_1, a_2, \cdots, a_{k+1}, a_k, a_{k-1}\)という並びに変換する。$$\begin{eqnarray}1, 2, 3, 4, 5, 6, \cdots, \\ \downarrow \ (f_3\text{による変換}) \\ 1, \underline{4}, 3, \underline{2}, 5, 6, \cdots \\ \downarrow\ (f_4\text{による変換})\\ 1, 4, \underline{5}, 2, \underline{3}, 5, \cdots \end{eqnarray}$$であるから、\(\underline{T_{3, 4} = (2, 4), (3, 5), (4, 2), (5, 3)}\)である。
\((3)\) まず、\(S_3\cup S_k = \{(2, 4), (4, 2), (k-1, k+1), (k+1, k-1)\}\)である。$$\begin{eqnarray}1, 2, 3, 4, 5, 6, \cdots \\ \downarrow (f_3\text{による変換})\\ 1, \underline{4}, 3, \underline{2}, 5, 6, \cdots\end{eqnarray}$$によって\(2, 4\)が入れ替わる。したがって、\(k-1 = 2\)か\(k-1 = 4\)か、あるいは\(k+1 = 2\)か\(k+1 = 4\)のときに限り、\(T_{3, k} \ne S_3\cup S_k\)となることがわかる。よって、\(\underline{k = 1, 3, 5}\)である。
\((4)\) \((3)\)から\(k = 1, 3, 5\)の可能性しかない。
\(\ \ (i)\) \(k = 1\)のとき、$$\begin{eqnarray}0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, \cdots \\ \downarrow (f_3\text{による変換})\\ 0, 1, \underline{4}, 3, \underline{2}, 5, 6, \cdots \\ \downarrow (f_1\text{による変換})\\ \underline{4}, 1, \underline{0}, 3, 2, 5, 6, \cdots\end{eqnarray}$$および$$\begin{eqnarray}0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, \cdots, \\\downarrow (f_1\text{による変換})\\ \underline{2}, 1, \underline{0}, 3, 4, 5, 6, \cdots \\ \downarrow (f_3\text{による変換})\\ 2, 1, \underline{4}, 3, \underline{0}, 5, 6, \cdots\end{eqnarray}$$であるから、\(T_{3, 1}\ne T_{1, 3}\)である。
\(\ \ (ii)\) \(k = 3\)のとき、$$\begin{eqnarray}0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, \cdots \\ \downarrow (f_3\text{による変換})\\ 0, 1, \underline{4}, 3, \underline{2}, 5, 6, \cdots \\ \downarrow (f_3\text{による変換})\\ 0, 1, \underline{2}, 3, \underline{4}, 5, 6, \cdots\end{eqnarray}$$および$$\begin{eqnarray}0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, \cdots, \\ \downarrow (f_3\text{による変換})\\ 0, 1, \underline{4}, 3, \underline{2}, 5, 6, \cdots \\ \downarrow (f_3\text{による変換})\\ 0, 1, \underline{2}, 3, \underline{4}, 5, 6, \cdots\end{eqnarray}$$であるから、\(T_{3, 1} = T_{1, 3}\)である。
\(\ \ (iii)\) \(k = 5\)のとき、$$\begin{eqnarray}0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, \cdots \\ \downarrow (f_3\text{による変換})\\ 0, 1, \underline{4}, 3, \underline{2}, 5, 6, \cdots \\ \downarrow (f_5\text{による変換})\\ 0, 1, 4, 3, \underline{6}, 5, \underline{2}, \cdots\end{eqnarray}$$および$$\begin{eqnarray}0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, \cdots, \\\downarrow (f_5\text{による変換})\\ 0, 1, 2, 3, \underline{6}, 5, \underline{4}, \cdots \\ \downarrow (f_3\text{による変換})\\ 0, 1, \underline{6}, 3, \underline{2}, 5, 4, \cdots\end{eqnarray}$$であるから、\(T_{3, 5} \ne T_{5, 3}\)である。
以上から、求める答えは\(\underline{k = 1, 5}\)である。
解説
\((1)\) まず問題の意味を掴むという流れで、\(|m-k| > 2\)のときは\(g(x)\)の定義から\(f_k(m) = m\)となるので、これは集合\(S_k\)に含まれない。すると\(|m-k|\leq 2\)が必要となり、後は具体的に調べていけば良い。
\((2)\) \((1)\)から結局\(f_k(m)\)は\(a_1, a_2, \cdots, \underline{a_{k-1}}, a_k, \underline{a_{k+1}}, \cdots\)という整数の並びを\(a_1, a_2, \cdots, \underline{a_{k+1}}, a_k, \underline{a_{k-1}}, \cdots\)に変換する操作であることがわかる。その中で元の数字と元の数字と異なるもののペアが集合\(S_k\)に含まれる。ここでは\(a_{k-1}\)が\(a_{k+1}\)に変わっているので\((a_{k-1}, a_{k+1})\)が\(S_k\)に含まれ、また\(a_{k+1}\)が\(a_{k-1}\)に変わっているので\((a_{k+1}, a_{k-1})\)も\(S_k\)に含まれる。\(T_{k, l}\)はこの操作をもう一度繰り返したものになる。
\((3)\) 問題の構造が把握できていれば、\(k-1\)か\(k+1\)が\(2, 4\)のどれかになるので、\(T_{3, 4} = S_3\cup S_k\)となることがわかる。したがって、\(k = 1, 3, 5\)となる。
\((4)\) \((3)\)から\(k = 1, 3, 5\)しかないが、\(k = 3\)の場合は\(T_{3, 3} = T_{3, 3 }\)なので除いて考える。
この問題は大学で学ぶ群の互換性をテーマにしている。たとえば操作\(f_3\)を施してから次に\(f_4\)を施したとき、\(f_4(f_3(m))\ne f_3(f_4(m))\)となっている。操作の順番が問題になるというわけである。例eえばある整数に\(3\)を掛けてから\(4\)を掛けても、\(4\)を掛けてから\(3\)を掛けても結果は同じ数字になるが変換\(f_k(m)\)では順番が違うと結果が異なる。代数学の基礎の部分をテーマにした問題ということになる。
関連問題
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2006年度前期東京医科歯科大学数学問題1 数列、場合の数、置き換え
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