[math]1999年東京大学理系前期数学問題2

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問題

複素数\(z_n\ (n=1,\ 2,\ \cdots)\)を\(z_1= 1, z_{n+1}=(3+4i)z_n+1\)によって定める。ただし\(i\)は虚数単位であり、また、複素数\(z = x + yi\)(\(x, y\)は実数)に対して、\(|z|\)を$$z=\sqrt{x^2+y^2}$$で定義する。
\((1)\)すべての自然数\(n\)について\(\frac{3\times 5^{n-1}}{4}< |z_n| < \frac{5^n}{4}\)が成り立つことを示せ。
\((2)\)実数\(r > 0\)に対して、\(|z_n| \leq r\)を満たす\(z_n\)の個数を\(f(r)\)とおく。このとき\(\lim_{r\to +\infty}{\frac{f(r)}{\log{r}}}\)を求めよ。

方針

\((1)\)三角不等式を用いる。
\((2)\) \((1)\)を利用できるような\(r\)を設定する。

解答

\((1)\)\(\omega = (3+4i)\omega+1\)を満たす複素数\(\omega\)を考える。\(z_{n+1}-\omega=(3+4i)(z_n-\omega)\)である。繰り返しこれを用いて、\(z_n-\omega = (3+4i)^{n-1}(z_1-\omega)\)である。\(n=1\)のときもこの式は成り立つ。したがって、\(z_n = (3+4i)^{n-1}(1-\omega)+\omega\)となる。
一般に複素数\(p, q\)に対して$$||p|-|q|| \leq |p+q|\leq |p|+|q|$$が成り立つ。これを用いると、$$||3+4i|^{n-1}|1-\omega|-|\omega|| \leq |z_{n}|\leq |3+4i|^{n-1}|1-\omega|+|\omega|$$である。変形して、$$|5^{n-1}|1-\omega|-|\omega||\leq |z_{n}|\leq 5^{n-1}|1-\omega|+|\omega|$$である。\(\omega\)を求めると、\(\omega = -\frac{1-2i}{10}\)となる。したがって、\(|1-\omega|= \frac{\sqrt{5}}{2},\ |\omega|=\frac{\sqrt{5}}{10}\)となる。上の式に代入して整理すると、$$\frac{\sqrt{5}}{10}(5^n-1)\leq |z_n|\leq \frac{\sqrt{5}}{10}(5^n+1)$$である。与えられた不等式が成り立つためには、$$\frac{\sqrt{5}}{10}(5^n-1)>\frac{3\times 5^{n-1}}{4}$$かつ$$\frac{\sqrt{5}}{10}(5^n+1)< \frac{5^{n}}{4}$$が成立すれば良い。
上の式は\(5^n > \frac{20+6\sqrt{5}}{11} = 3.03\cdots\)と同値であるが、\(n\geq 1\)で成立する。下の式は\(5^n > 2(\sqrt{5}+2)\)と同値であるが、\(n\geq 2\)で成立する。\(n=1\)の時は題意は明らかに成立するので、以上から示すべき不等式は示された。

\((2)\) \((1)\)から、\(\frac{3\times 5^{n-1}}{4}\leq r\leq \frac{5^{n}}{4}\)の時、\(|z_n|\leq r\)を満たす\(z_n\)の個数は\(z_1, \ z_2,\ \cdots,\ z_{n-1}\)の\(n-1\)個か、\(z_1,\ z_2,\ \cdots,\ z_n\)の\(n\)個である。したがって、\(n-1\leq f(r)\leq n\)である。また、\(\frac{3\times 5^{n-1}}{4}\leq r\leq \frac{5^n}{4}\)を変形すると、\(\frac{1}{n\log{5}-\log{4}}\leq \frac{1}{\log{r}}\leq \frac{1}{(n-1)\log{5}+\log{3}-\log{4}} \)となる。以上から、$$\frac{n-1}{n\log{5}-\log{4}}\leq \frac{f(r)}{\log{r}}\leq \frac{n}{(n-1)\log{5}+\log{3}-\log{4}}$$が成り立つ。\(r\to \infty\)、つまり、\(n\to\infty\)とすると、\(\frac{f(r)}{\log{r}}\)の極限が

\(\frac{1}{\log{5}}\)

であることが分かる。

解説

\((1)\)で\(|z_n|\)が\(\frac{3\times 5^{n-1}}{4}\)から\(\frac{5^n}{4}\)の範囲に含まれることが分かり、この範囲は各\(z_n\)に対して重複しないので(なぜなら\(z_n < \frac{5^{n}}{4} < \frac{3\times 5^{n}}{4} < z_{n+1}\)であるから)、\(r\)を解答のように設定した時、\(f(r)\)の大まかな個数が\(n\)であることが分かる。厳密にやるには不等式で挟み込む。

漸化式で\(+1\)を無視すると、\(z_{n+1}=(3+4i)z_n\)となる。したがって、\(|z_{n+1}|=5|z_n|\)、これを解いて、\(|z_n|=5^{n-1}\)となる。ある\(r\)に対して、\(|z_n|\leq r\)を満たす\(z_n\)の個数は\(r = 5^{n-1}\)とすると\(z_1,\ z_2,\ \cdots,\ z_n\)の\(n\)個で、これからも\(\frac{f(r)}{\log{r}}\)のおおよその値が\(\frac{1}{\log{5}}\)であることが分かる。

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