問題
\(x \geq 0\)を定義域とする関数の列$$f_0(x), f_1(x), \cdots, f_n(x), \cdots$$を次式による帰納的に定義する。$$f_0(x) = 1, f_n(x) = \int_{0}^{x}{\frac{f_{n-1}(t)}{t+1}dt}\ \ (n\geq 1)$$このとき次の問いに答えよ。
\((1)\) \(f_1(x), f_2(x), f_3(x)\)を求めよ。
\((2)\) \(f_n(x)\)を求めよ。
\((3)\) 曲線\(y = f_n(x)\ \ (n\geq 1), x = a\ \ (a > 0)\)および\(x\)軸で囲まれる図形の面積を\(S_n(a)\)とおくとき$$S_n(a)+S_{n+1}(a) = \frac{a+1}{(n+1)!}$$をみたす\(a\)の値を求めよ。
\((4)\) 無限級数\(\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty}{\frac{(-1)^k}{k!}}\)の和を求めよ。
方針
いかにも医科歯科大学らしい出題である。丁寧な誘導に従うと良い。
解答
\((1)\) $$\begin{eqnarray}f_1(x) & = & \int_{0}^{x}{\frac{1}{t+1}dt}\\ & = & [\log{(t+1)}]_{0}^{x}\\ & = & \underline{\log{(x+1)}}\\ f_2(x) & = & \int_{0}^{x}{\frac{\log{(t+1)}}{t+1}dt}\\ & = & \left[\frac{1}{2}(\log{(t+1)})^2\right]_{0}^{x}\\ & = & \underline{\frac{1}{2}(\log{(x+1)})^2}\\ f_3(x) & = & \int_{0}^{x}{\frac{1}{2}\cdot \frac{(\log{(t+1)})^2}{t+1}dt}\\ & = & \left[\frac{1}{6}(\log{(t+1)})^3\right]_{0}^{x}\\ & = & \underline{\frac{1}{6}(\log{(x+1)})^3}\end{eqnarray}$$である。
\((2)\) \((1)\)から\(\displaystyle \underline{f_n(x) = \frac{(\log{(x+1)})^n}{n!}}\ \ (n\geq 0)\)と予想できる。これを仮定すると、$$\begin{eqnarray}f_{n+1}(x) & = & \int_{0}^{x}{\frac{1}{n!}\cdot \frac{(\log{(t+1)})^n}{t+1}dt} \\ & = & \left[\frac{1}{n!}\frac{(\log{(t+1)})^{n+1}}{n+1}\right]_{0}^{x}\\ & = & \frac{(\log{(x+1)})^{n+1}}{(n+1)!}\end{eqnarray}$$である。
\((3)\) \(f_n(x) = 0\)となるのは\(x = 0\)のときで、\(x > 0\)では\(f_n(x) > 0\)であるから、$$\begin{eqnarray}S_{n+1}(a) & = & \int_{0}^{a}{f_{n+1}(x)}\\ & = & \frac{1}{(n+1)!}\int_{0}^{a}{((x+1)^{\prime}(\log{(x+1)})^{n+1})dx}\\ & = & \frac{1}{(n+1)!}[(x+1)(\log{(x+1)})^{n+1}]_{0}^{a}\\ & & -\frac{1}{(n+1)!}\int_{0}^{a}{(x+1)\cdot \frac{(n+1)(\log{(x+1)})^{n}}{x+1}dx}\\ & = & \frac{(a+1)(\log{(a+1)})^{n+1}}{(n+1)!}-S_n(a) \end{eqnarray}$$となる。したがって、$$S_n(a)+S_{n+1}(a) = \frac{(a+1)(\log{(a+1)})^{n+1}}{(n+1)!}$$である。与えられた条件$$S_n(a)+S_{n+1}(a) = \frac{a+1}{(n+1!)}$$と見比べると、\(a > 0\)から、\(\log{(a+1)} = 1\)でなければならない。よって、\(\underline{a = e-1}\)となる。ただし、\(e\)は自然対数の底である。
\((4)\) \((3)\)から\(n\geq 2\)のとき$$\begin{eqnarray}S_1(a) + S_2(a) & = & \frac{a+1}{2!}\\ -S_2(a) -S_3(a) & = & -\frac{a+1}{3!}\\ S_3(a) + S_4(a) & = & \frac{a+1}{4!}\\ \cdots & = & \cdots \\ (-1)^{n}S_{n-1}(a) + (-1)^{n}S_n(a) & = & \frac{(-1)^n(a+1)}{n!}\end{eqnarray}$$となる。辺ごとに足すと、左辺では\(S_1(a)\)と\(S_n(a)\)以外は打ち消しあうので、$$\begin{eqnarray}S_1(a) +(-1)^nS_n(a) & = & (a+1)\left(\frac{1}{2!}-\frac{1}{3!}+\cdots + \frac{(-1)^n}{n!}\right)\\ & = & e\left(\frac{1}{2!}-\frac{1}{3!}+\cdots + \frac{(-1)^n}{n!}\right)\end{eqnarray}$$である。変形して、$$\sum_{k=1}^{n}{\frac{(-1)^k}{k!}} = \frac{e-S_1(a)-(-1)^nS_n(a)}{e}$$である。ここで、$$\begin{eqnarray}S_n(a) & = & \int_{0}^{a}{\frac{(\log{(x+1)})^n}{n!}dx}\\ & \leq & \int_{0}^{a}{\frac{(\log{(e-1+1)})^n}{n!}dx}\\ & = & \int_{0}^{a}{\frac{1}{n!}dx}\\ & = & \frac{a}{n!}\end{eqnarray}$$であるから、\(n\to\infty\)のとき\(S_n(a)\leq 0\)である。\(S_n > 0\)は分かっているので、はさみうちの原理から\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{S_n(a)} = 0\)である。したがって、$$\begin{eqnarray}\sum_{k=1}^{\infty}{\frac{(-1)^k}{k!}} & = & \frac{e-S_1(a)}{e} \\ & = & 1-\frac{1}{e}\int_{0}^{a}{\log{(x+1)}dx}\\ & = & 1-\frac{1}{e}[(x+1)(\log{(x+1)}-1)]_{0}^{e-1}\\ & = & \underline{\frac{e-1}{e}}\end{eqnarray}$$となる。
解説
\((1)\) ここはしっかりと取りたい。
\((2)\) \((1)\)から\(f_n(x)\)は予想できるので、当然帰納法となる。
\((3)\) 部分積分法を用いる。少し思いつきにくいかもしれない。
\((4)\) 当然\((3)\)を利用する。メインは計算だが、慣れていないと難しく感じるかもしれない。
関連問題
1972年東京医科歯科大学数学問題 部分積分法と積分の漸化式
1984年東京大学理系数学問題3 級数と数列、多項式と微分、必要条件と十分条件
2011年東京医科歯科大学前期数学問題3
無限級数と数列、ライプニッツ級数、メルカトール級数
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