問題
\(xy\)平面上の\(2\)直線$$\begin{eqnarray}l & : & \sqrt{3}x-y & = & \sqrt{3}\\ m & : & x-\sqrt{3}y & = & -1\end{eqnarray}$$が\(x\)軸と交わる点をそれぞれ\(A, B\)とする。いま、点\(A\)を中心として直線\(l\)を\(1\)回転させ、同時に同じ速さで直線\(m\)を点\(B\)を中心として\(1\)回転させる。次のそれぞれの場合について、\(2\)直線の交点\(P\)のえがく図形の方程式を求め、その図形の概形をかけ。
\((1)\) \(l\)と\(m\)を正の向きに回転させる場合
\((2)\) \(l\)を正の向きに、\(m\)を負の向きに回転させる場合
方針
難しい問題で、色々な解き方があると考えられるが、下の解答のように直接回転後の直線を求めて、その交点を求めるのが早い。
解答
\(l, m\)の方程式で\(x = 0\)とおいて、\(A(1, 0), B(-1, 0)\)がわかる。\(l\)と\(m\)の交点を求める。\(l, m\)の方程式を連立させて、$$\begin{eqnarray}\begin{pmatrix}\sqrt{3} & -1\\ 1 & -\sqrt{3}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\ y\end{pmatrix} & = & \begin{pmatrix}\sqrt{3}\\ -1\end{pmatrix}\\ \begin{pmatrix}x \\ y\end{pmatrix} & = & -\frac{1}{2}\begin{pmatrix}-\sqrt{3} & 1\\ -1 & \sqrt{3}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}\sqrt{3}\\ -1\end{pmatrix}\\ & = & -\frac{1}{2}\begin{pmatrix}-3-1\\ -\sqrt{3}-\sqrt{3}\end{pmatrix}\\ & = & \begin{pmatrix}2\\ \sqrt{3}\end{pmatrix}\end{eqnarray}$$である。
この交点を\(P_0\)として、点\(P_0\)を点\(A\)を中心として、\(\theta\)だけ回転させた点を\(P_l\)とすると、原点を\(O\)として、$$\begin{eqnarray}\overrightarrow{OP_l} & = & \overrightarrow{OA} + \begin{pmatrix}\cos{\theta} & -\sin{\theta}\\ \sin{\theta} & \cos{\theta}\end{pmatrix}\overrightarrow{AP_0}\\ & = & \begin{pmatrix}1 \\ 0\end{pmatrix} + \begin{pmatrix}\cos{\theta} & -\sin{\theta}\\ \sin{\theta} & \cos{\theta}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}1 \\ \sqrt{3}\end{pmatrix}\\ & = & \begin{pmatrix}\cos{\theta}-\sqrt{3}\sin{\theta} + 1\\ \sqrt{3}\cos{\theta} + \sin{\theta}\end{pmatrix}\end{eqnarray}$$である。同様に、点\(P_0\)を点\(B\)を中心として、\(\theta\)だけ回転させた点を\(P_m\)とすると、$$\begin{eqnarray}\overrightarrow{OP_m} & = & \overrightarrow{OB} + \begin{pmatrix}\cos{\theta} & -\sin{\theta}\\ \sin{\theta} & \cos{\theta}\end{pmatrix}\overrightarrow{BP_0}\\ & = & \begin{pmatrix}-1 \\ 0\end{pmatrix} + \begin{pmatrix}\cos{\theta} & -\sin{\theta}\\ \sin{\theta} & \cos{\theta}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}3 \\ \sqrt{3}\end{pmatrix}\\ & = & \begin{pmatrix}3\cos{\theta}-\sqrt{3}\sin{\theta} – 1\\ \sqrt{3}\cos{\theta} + 3\sin{\theta}\end{pmatrix}\end{eqnarray}$$である。題意のように\(l\)を回転させた直線は、点\(A\)と点\(P_l\)を取る。その直線を\(l^{\prime}\)とすると、方程式は$$\begin{eqnarray}\overrightarrow{OA} & = & \begin{pmatrix}1\\ 0\end{pmatrix}\\ \overrightarrow{OP_l} & = & \begin{pmatrix}\cos{\theta}-\sqrt{3}\sin{\theta}+1\\ \sqrt{3}\cos{\theta}+\sin{\theta}\end{pmatrix}\end{eqnarray}$$から、$$(x-1)(\sqrt{3}\cos{\theta}+\sin{\theta}) = y(\cos{\theta}-\sqrt{3}\sin{\theta})$$と求めることができる。\(\cos{\theta},\sin{\theta}\)についてこれをまとめると、$$l^{\prime}: \sin{\theta}(x+\sqrt{3}-1) = -\cos{\theta}(\sqrt{3}x-y-\sqrt{3})$$となる。全く同様に、題意のように\(m\)を回転させた直線は、点\(B\)と点\(P_m\)を通る。その直線を\(m^{\prime}\)とすると、方程式は$$\begin{eqnarray}\overrightarrow{OB} & = & \begin{pmatrix}-1\\ 0\end{pmatrix}\\ \overrightarrow{OP_m} & = & \begin{pmatrix}3\cos{\theta}-\sqrt{3}\sin{\theta}-1\\ \sqrt{3}\cos{\theta}+3\sin{\theta}\end{pmatrix}\end{eqnarray}$$から、$$(x-1)(\sqrt{3}\cos{\theta}+3\sin{\theta}) = y(3\cos{\theta}-\sqrt{3}\sin{\theta})$$と求めることができる。両辺を\(\sqrt{3}\)で割って、\(\cos{\theta}, \sin{\theta}\)についてこれをまとめると、$$m^{\prime}: \sin{\theta}(x+y+\sqrt{3}) = -\cos{\theta}(x-\sqrt{3}y+1)$$となる。
\((1)\) $$\begin{eqnarray}l^{\prime} & : & \sin{\theta}(x+\sqrt{3}-1) & = & -\cos{\theta}(\sqrt{3}x-y-\sqrt{3})\\ m^{\prime} & : & \sin{\theta}(x+y+\sqrt{3}) & = & -\cos{\theta}(x-\sqrt{3}y + 1)\end{eqnarray}$$から\(\sin{\theta}, \cos{\theta}\)を消去すると、$$(x+\sqrt{3}y-1)(x-\sqrt{3}y+1) = (\sqrt{3}x+y+\sqrt{3})(\sqrt{3}x-y-\sqrt{3})$$である。これを展開して整理すると、\(\underline{x^2+(y-\sqrt{3})^2 = 4}\)となる。
\((2)\) \(m^{\prime}\)の式で\(\theta\)を\(-\theta\)に変えたものが、題意のように\(m\)を負の向きに回転させた直線である。その直線を\(m^{\prime\prime}\)とすると、上の過程から、$$\begin{eqnarray}l^{\prime} & : & \sin{\theta}(x+\sqrt{3}-1) & = & -\cos{\theta}(\sqrt{3}x-y-\sqrt{3})\\ m^{\prime\prime} & : & -\sin{\theta}(x+y+\sqrt{3}) & = & -\cos{\theta}(x-\sqrt{3}y + 1)\end{eqnarray}$$である。\(\sin{\theta}, \cos{\theta}\)を消去して、$$(x+\sqrt{3}y-1)(x-\sqrt{3}y+1) = -(\sqrt{3}x+y+\sqrt{3})(\sqrt{3}x-y-\sqrt{3})$$である。これを展開して整理すると、\(\underline{x^2-y^2=1}\)となる。
解説
解答では様々な工夫をしている。まず最初に、回転後の直線を求めるのに、初期状態での\(l, m\)の交点\(P_0\)を点\(A, B\)を中心として回転させた点(解答の点\(P_m, P_l\))を持ち出している。回転後の直線はこの点を通るので、まずここから求めている。
この点を求めた後は、直線を求める。一般に、\(2\)点\((a, b), (c, d)\)を通る直線は$$(x-a)(d-b) = (y-b)(c-a)$$または$$(x-c)(b-d) = (y-d)(a-c)$$と求めることができる。これは、たとえば前者を$$y-b = \frac{d-b}{c-a}(x-a)$$と書けば当たり前であるが、文字式のままだと\(c-a\)が\(0\)になるかどうかなど場合分けが煩わしいので、はじめから分母を払った形で書いている。分母が\(0\)の場合分けがされていないとみなされてしまうと減点は免れないので、直線の方程式を書くときはこの形で書く習慣を見に付けておくと良い。
\((1)\) 直線が求まった後は計算になる。ここに計算過程を載せておく。$$\begin{eqnarray}(x+\sqrt{3}y-1)(x-\sqrt{3}y+1) & = & (\sqrt{3}x+y+\sqrt{3})(\sqrt{3}x-y-\sqrt{3})\\ x^2-\sqrt{3}xy+x+\sqrt{3}xy & = & 3x^2-\sqrt{3}xy-3x+\sqrt{3}xy\\ -3y^2+\sqrt{3}y-x+\sqrt{3}y-1 & = & -y^2-\sqrt{3}y+3x-\sqrt{3}y-3\\ x^2-3y^2+2\sqrt{3}y-1 & = & 3x^2-y^2-2\sqrt{3}y-3\\ 0 & = & 2x^2+2y^2-4\sqrt{3}y-2\end{eqnarray}$$である。整理するとこれは円になる。
\((2)\)解答ではやや丁重に書いたが、実は上と同じ計算を繰り替えす必要はない。上の計算過程で$$x^2-3y^2+2\sqrt{3}y-1 = 3x^2-y^2-2\sqrt{3}y-3$$となっていたが、この右辺の符号をすべて逆にすればそのまま\((2)\)の求める式になっていて、省エネが可能である。曲線は双曲線になる。
難しい問題ではあるが、技術的に学ぶことも多いだろう。
関連問題
1979年東京大学理系数学問題4 距離の最大値、最小値と円、正三角形
1994年東京医科歯科大学数学問題2 座標平面、座標空間と法線
1996年京都大学前期数学問題文理共通文系問題1理系問題1 ベクトルと座標平面
2000年京都大学前期数学問題理系問題3 座標平面とベクトル、三角関数の関係式
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