問題
\(n\)を正の奇数とする。曲線\(y = \sin{x}\ \ ((n-1)\pi \leq x\leq n\pi)\)と\(x\)軸で囲まれた部分を\(D_n\)とする。直線\(x + y = 0\)を\(l\)とおき、\(l\)の周りに\(D_n\)を\(1\)回転させてできる回転体を\(V_n\)とする。
\((1)\) \((n-1)\pi \leq x\leq n\pi\)に対して、点\((x, \sin{x})\)を\(P\)とおく。また\(P\)から\(l\)に下ろした垂線と\(x\)軸の交点を\(Q\)とする。線分\(PQ\)を\(l\)の周りに\(1\)回転させてできる図形の面積を\(x\)の式で表わせ。
\((2)\) \((1)\)の結果を用いて、回転体\(V_n\)の体積を\(n\)の式で表わせ。
方針
斜軸回転の問題であるが、誘導があるので難しくはない。
解答
\((1)\) 紛らわしいので点\(P\)の座標を\((t, \sin{t})\)とする。点\(P\)から直線\(l\)に下ろした垂線の足を\(R\)とする。線分\(PR\)の長さは、$$\begin{eqnarray}PR & = & \frac{|t+\sin{t}|}{\sqrt{1^2+1^2}}\\ & = & \frac{|t+\sin{t}|}{\sqrt{2}}\\ & = & \frac{t + \sin{t}}{\sqrt{2}}\end{eqnarray}$$である。また、点\(P\)を通り\(l\)に垂直な直線は\(y = x-t+\sin{t}\)である。\(y = 0\)として、点\(Q\)の\(x\)座標は\(x = t-\sin{t}\)である。これから、$$\begin{eqnarray}PQ^2 & = & (t-\sin{t}-t)^2 + (\sin{t})^2 \\& = & 2\sin^2{t}\end{eqnarray}$$となる。よって、\(PQ = \sqrt{2}\sin{t}\)で、\(\displaystyle QR = PR-PQ = \frac{(t+\sin{t})}{\sqrt{2}}-\sqrt{2}\sin{t} = \frac{t-\sin{t}}{\sqrt{2}}\)である。以上から、線分\(PQ\)を\(l\)の周りに\(1\)回転してできる図形の面積は、$$\begin{eqnarray} \pi (PR^2 – QR^2) & = & \pi \left(\frac{(t+\sin{t})^2}{2}-\left(\frac{(t-\sin{t})}{\sqrt{2}}\right)^2\right)\\ & = & \pi(2\sin{t}(t+\sin{t})-2\sin^2{t})\\ & = & 2\pi t\sin{t}\end{eqnarray}$$となる。問題の要請に従い、\(t\)を\(x\)に戻して、求める答えは\(\underline{2\pi x\sin{x}}\)となる。
\((2)\) \(OR = s\)とすると、$$\begin{eqnarray}s & = & \sqrt{OQ^2-QR^2}\\ & = & \sqrt{(x-\sin{x})^2-\left(\frac{(x-\sin{x})}{\sqrt{2}}\right)^2}\\ & = & \frac{x-\sin{x}}{\sqrt{2}}\end{eqnarray}$$である。これから、$$\frac{ds}{dx} = \frac{1-\cos{x}}{\sqrt{2}}\geq 0$$となる。つまり、\(x\)が増加すれば\(s\)も増加するので、線分\(PQ\)が複数回\(y = \sin{x}\)と交わることはない。\(n\)が奇数であることに注意して、$$\begin{eqnarray}V_n & = & \int{2\pi x\sin{x} ds}\\ & = & 2\pi\int{x\sin{x}\frac{ds}{dx}dx}\\ & = & 2\pi\int_{(n-1)\pi}^{n\pi}{x\sin{x}\cdot \frac{1-\cos{x}}{\sqrt{2}}dx}\\ & = & \frac{\sqrt{2}\pi}{2}\int_{(n-1)\pi}^{n\pi}{x((1-\cos{x})^2)^{\prime}dx}\\ & = & \frac{\sqrt{2}\pi}{2}\left([x(1-\cos{x})^2]_{(n-1)\pi}^{n\pi}-\int_{(n-1)\pi}^{n\pi}{(1-\cos{x})^2dx}\right)\\ & = & \frac{\sqrt{2}\pi}{2}\left(4n\pi-\int_{(n-1)\pi}^{n\pi}{(1-2\cos{x}+\cos^2{x})dx}\right)\\ & = & \frac{\sqrt{2}\pi}{2}\left(4n\pi-\left[x-2\sin{x}\right]_{(n-1)\pi}^{n\pi}-\int_{(n-1)\pi}^{n\pi}{\frac{1+\cos{2x}}{2}dx}\right)\\ & = & \frac{\sqrt{2}\pi}{2}\left(4n\pi-\pi-\frac{1}{2}\left[x+\frac{\sin{2x}}{2}\right]_{(n-1)\pi}^{n\pi}\right)\\ & = & \frac{\sqrt{2}\pi}{2}\left(4n\pi-\pi-\frac{\pi}{2}\right)\\ & = & \underline{\frac{(8n-3)\sqrt{2}{\pi}^2}{4}}\end{eqnarray}$$となる。
解説
\((2)\) \((1)\)を用いるが、積分を行うときに、解答で用いた記号を使うと、\(OR\)の方向に積分するので注意しなくてはいけない。\(x\)で積分するのでなく、解答のように\(s\)を用いて変数変換しないといけない。
\((2)\)の積分計算は色々工夫をしても十分に面倒である。実は、パップス・ギュルダンの定理を使うと答えはすぐに求める事ができる。\(y = \sin{x}\ ((n-1)\pi\leq x\leq n\pi)\)の重心は\(\displaystyle \left(\frac{2n-1}{2}\pi, \frac{\pi}{8}\right)\)である(求め方は幾何中心を参照)。この重心と直線\(l: x + y = 0\)との距離\(g_x\)は$$g_x = \frac{\left|\frac{(2n-1)\pi}{2} + \frac{\pi}{8}\right|}{\sqrt{2}} = \frac{(8n-3)\sqrt{2}\pi}{16}$$である。\(y = \sin{x}\)の\((n-1)\pi \leq x\leq n\pi\)の部分の面積\(S\)は$$S = \int_{0}^{\pi}{\sin{x}dx} = [-\cos{x}]_{0}^{\pi} = 2$$となるので、求める体積は$$V_n = 2\pi g_x S = \frac{(8n-3)\sqrt{2}{\pi}^2}{4}$$となる。パップス・ギュルダンの定理が入試ですぐに役に立つことはあまりないのだが、これは稀有な例と言っても良いだろう。
関連問題
1983年東京大学理系数学第6問 斜回転体の体積
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