問題
\(xyz\)空間内の一辺の長さが\(1\)の立方体$$\{(x, y, z)|\ \ 0\leq x\leq 1\ \ , 0\leq y\leq 1\ \ , 0\leq z\leq 1\}$$を\(Q\)とする。点\(X\)は頂点\(A(0, 0, 0)\)から出発して\(Q\)の辺上を\(1\)秒ごとに長さ\(1\)だけ進んで隣の頂点に移動する。\(X\)が\(x\)軸、\(y\)軸、\(z\)軸に平行に進む確率はそれぞれ\(p, q, r\)である。ただし、$$p\geq 0,\ \ q\geq 0,\ \ r \geq 0,\ \ p+q+r = 1$$である。\(X\)が\(n\)秒後に頂点\(A(0, 0, 0), \ \ B(1, 1, 0),\ \ C(1, 0, 1),\ \ D(0, 1, 1)\)にある確率をそれぞれ\(a_n,\ \ b_n,\ \ c_n,\ \ d_n\)とする。
\((1)\) \(a_{n+2}\)を\(a_n,\ \ b_n,\ \ c_n,\ \ d_n\)と\(p,\ \ q,\ \ r\)を用いて表わせ。
\((2)\) \(a_n-b_n+c_n-d_n\)を\(p,\ \ q,\ \ r,\ \ n\)を用いて表わせ。
\((3)\) \(a_n\)を\(p,\ \ q,\ \ r,\ \ n\)を用いて表わせ。
方針
対称性を利用するのが良い。\((2)\)は\((1)\)をヒントに、\((3)\)は\((2)\)をヒントに同様の式をいくつか作る。
解答
\((1)\) \(X\)が\(n\)秒のときに\(Q\)上にあるとき、\(n+2\)秒後に点\(A, B, C, D\)以外から点\(A\)に移動することはない。\(n\)秒のときに点\(A\)にいて、\(n+2\)秒のときにも点\(A\)にいる確率は、行って戻ってくる確率なので、\((p^2+q^2+r^2)a_{n}\)である。\(n\)秒のときに点\(B\)にいて、\(n+2\)秒のときに点\(A\)にいる確率は、\(x\rightarrow y\)と進むか、\(y\rightarrow x\)と進む確率なので、\(2pqb_n\)である。\(n\)秒のときに点\(C\)にいて、\(n+2\)秒のときに点\(A\)にいる確率は、\(x\rightarrow z\)と進むか、\(z\rightarrow x\)と進む確率なので、\(2rpc_n\)である。\(n\)秒のときに点\(D\)にいて、\(n+2\)秒のときに点\(A\)にいる確率は、\(y\rightarrow z\)と進むか、\(z\rightarrow y\)と進む確率なので、\(2qrd_n\)である。以上から、\(\underline{a_{n+2} = (p^2+q^2+r^2)a_n + 2pqb_n + 2rpc_n + 2qrd_n}\)となる。
\((2)\) \((1)\)と同様に考えると、以下の漸化式が成り立つ。$$\begin{eqnarray}a_{n+2} & = & (p^2+q^2+r^2)a_n + 2pqb_n + 2rpc_n + 2qrd_n\\ b_{n+2} & = & 2pqa_n + (p^2+q^2+r^2)b_n + 2qrc_n + 2rpd_n\\ c_{n+2} & = & 2rpa_n + 2qrb_n + (p^2+q^2+r^2)c_n + 2pqd_n\\ d_{n+2} & = & 2qra_n + 2rpb_n + 2pqc_n + (p^2+q^2+r^2)d_n\end{eqnarray}$$これから、$$\begin{eqnarray}a_{n+2}-b_{n+2}+c_{n+2}-d_{n+2} & = & (p^2+q^2+r^2-2pq+2rp-2qr)(a_n-b_n+c_n-d_n)\end{eqnarray}$$となる。\(p^2+q^2+r^2-2pq+2rp-2qr = (p-q+r)^2\)であり、\(a_0-b_0+c_0-d_0 = 1\)であるから、\(n\)が偶数のとき、\(\underline{a_n-b_n+c_n-d_n = (p-q+r)^{n}}\)であり、\(n\)が奇数のとき、\(\underline{a_n-b_n+c_n-d_n = 0}\)となる。
\((3)\) \((2)\)と同様に、$$\begin{eqnarray}a_{n+2}+b_{n+2}-c_{n+2}-d_{n+2} & = & (p^2+q^2+r^2+2pq-2qr-2rp)(a_n+b_n-c_n-d_n)\\ & = & (p+q-r)^2(a_n+b_n-c_n-d_n)\end{eqnarray}$$であるから、\(n\)が偶数のとき、\(a_n+b_n-c_n-d_n = (p+q-r)^{n}\)である。また、$$\begin{eqnarray}a_{n+2}-b_{n+2}-c_{n+2}+d_{n+2} & = & (p^2+q^2+r^2-2pq+2qr-2rp)(a_n-b_n-c_n+d_n)\\ & = & (p-q-r)^2(a_n+b_n-c_n-d_n)\end{eqnarray}$$であるから、\(n\)が偶数のとき、\(a_n-b_n-c_n+d_n = (p-q-r)^{n}\)である。\((2)\)も利用して並べて書くと、\(n\)が偶数のとき\(a_n+b_n+c_n+d_n = 1\)であるから、$$\begin{eqnarray}a_n+b_n+c_n+d_n & = & 1\\ a_n-b_n+c_n-d_n & = & (p-q+r)^{n}\\ a_n+b_n-c_n-d_n & = & (p+q-r)^{n}\\ a_n-b_n-c_n+d_n & = & (p-q-r)^{n}\end{eqnarray}$$である。この式をすべて足して、\(\displaystyle \underline{a_n = \frac{1+(p-q+r)^{n}+(p+q-r)^{n}+(p-q-r)^{n}}{4}}\)となる。また、\(n\)が奇数のときは、\(\underline{a_n = 0}\)である。
解説
典型的な漸化式の問題であるが、自分で立式する必要がありそれなりに難しい。ちなみに、\(p+q+r=1\)であるから、例えば$$\begin{eqnarray}p-q+r & = & 1-q-q\\ & = & 1-2q\end{eqnarray}$$であり、\(0\leq q\leq 1\)であるから、\(-1\leq 1-2q\leq 1\)である。\(1-2q = -1\)となるときは、\(q = 1\)のときで、このとき\(p = r = 0\)であるから、\(\displaystyle a_n = \frac{1+(-1)^n+1+(-1)^n}{4}\)となる。したがって、\(n\)が偶数のとき\(a_n = 1\)で、\(n\)が奇数のときは\(a_n = 0\)となる。このように、\(q = 1\)あるいは\(p = 1\)、または\(r = 1\)となるような場合を除いて\(|p-q+r| < 1\)などとなるから、\(n\to \infty\)で\(\displaystyle a_n\to \frac{1}{4}\)となる。これは、長い時間が経てば\(n\)が偶数のとき点\(X\)は\(A, B, C, D\)のどれかに存在するということで、自然な結論だろう。
関連問題
1971年東京大学文理共通問題文系問題2理系問題2 漸化式と数列、不等式
1975年東京大学理系数学問題6 確率と期待値の漸化式
1991年東京大学前期理系数学問題1 確率と漸化式、対称性
1993年東京大学理系前期数学問題5 確率と漸化式、個別に考える
1995年東京医科歯科大学数学問題2 数列と漸化式
コメント