[math]1976年京都大学理系数学問題4

問題

正の数列\(\{a_n\}\ (n=1, 2, 3, \cdots)\)が不等式$${a_n}^3+3{a_n}^2-\left(9+\frac{1}{n}\right)a_n+5 < 0$$をみたしているとき、次の\((1), (2)\)を証明せよ。ただし、\((2)\)を先に証明してもよい。
\((1)\) \(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{a_n} = 1\)
\((2)\) \(\displaystyle (a_n-1)^2< \frac{1}{4n}\)

方針

数列と書いてあるが数列とは何の関係もない問題である。問題文の指示どおり、\((2)\)から解くのが楽であるが・・・。

解答

与えられた不等式を変形すると、$$(a_n-1)^2(a_n+5)<\frac{a_n}{n} \tag{a}$$である。\(a_n\)は正の数列だから、両辺を\(a_n\)で割って、$$\frac{(a_n-1)^2(a_n+5)}{a_n}<\frac{1}{n} \tag{b}$$である。ここで、\(\displaystyle f(x) = \frac{(x-1)^2(x+5)}{x}\ (x > 0)\)とすると、\(\displaystyle f(x) = x^2+3x-9+\frac{5}{x}\)であり、$$\begin{eqnarray}f^{\prime}(x) & = & 2x + 3-\frac{5}{x^2} \\ & = & \frac{(x-1)(2x^2+5x+5)}{x^2}\end{eqnarray}$$である。\(\displaystyle 2x^2+5x+5=2\left(x + \frac{5}{4}\right)^2+\frac{15}{8} > 0\)だから、\(f(x)\)は\(x=1\)で最小値を取る。

\((2)\) \(\displaystyle (a_n-1)^2<\frac{1}{4n}\)を示すには、式\((a)\)から\(\displaystyle \frac{a_n}{a_n+5}<\frac{1}{4}\)、つまり\(\displaystyle a_n < \frac{5}{3}\)が示せれば良い。\(\displaystyle \frac{1}{n}\leq 1\)に注意すると、式\((b)\)から\(f(a_n) < 1\)である。仮に\(\displaystyle a_n \geq \frac{5}{3}\)とすると、この範囲で\(f(x)\)は増加だから、$$f(a_n)\geq f\left(\frac{5}{3}\right) = \frac{16}{9}$$となり、\(f(a_n) < 1\)に反する。よって、\(\displaystyle a_n < \frac{5}{3}\)であり、題意が成立する。

\((1)\) 先に\((2)\)を解くと\((1)\)は明らかであるが、次のようにしても良い。すなわち、式\((a)\)より$$(a_n-1)^2 < \frac{a_n}{a_n+5}\cdot \frac{1}{n}$$となり、\(a_n\)は正なので、\(\displaystyle \frac{a_n}{a_n+5} < 1\)だから、\(\displaystyle (a_n-1)^2<\frac{1}{n}\)となり、ここからも\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{a_n} = 1\)がわかる。

解説

係数の\(n\)が邪魔なので辺ごとに分けてしまう。いわゆる定数分離という奴である。この問題では数学的帰納法や小さい\(n\)で実験して予想という数列では必須と教わってきた手法が全く通用しない。\(a_n\)と\(a_{n+1}\)の関係が分からない以上数学的帰納法は使えず、\(n = 1, 2, 3, \cdots\)として実験してみても与えられた不等式の正体は見えない。問題が数列の問題ではなく数と式の問題なんだと気がつけるかどうか。それがこの問題の難しさなのだろう。多くは問題文を読んで、\((2)\)から示そうと考えらたことかと思うが、\(\displaystyle a_n < \frac{5}{3}\)を示す所で手が止まったことだろう。実は\((1)\)の方が簡単に示せるので問題文も中々意地悪だ。

関連問題

1988年東京工業大学数学問題1 はさみうちの原理
1993年京都大学後期理系数学問題3 文字定数\(\cdots\)

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