[math]2009年東京医科歯科大学前期数学問題2

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問題

正の実数\(a, b, c\)を係数とする\(2\)次式\(f(x) = ax^2+bx+c\)に関して、次の条件\(C\)を考える。
条件\(C:\) \(3\)で割り切れないすべての整数\(x\)について、\(f(x)\)が整数になる。
このとき、以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(f(x)\)が条件\(C\)を満たすとき、\(g(x)=f(x+3)-f(x)\)は係数および定数項が整数となる\(1\)次式であることを示せ。
\((2)\) 条件\(C\)を満たす\(f(x)\)のうち、\(f(x)=1\)となるものを求めよ。
\((3)\) 以下の条件\(C^{\prime}\)が条件\(C\)と同値になるような自然数の組\((m_1, m_2, m_3)\)のうち、\(m_1+m_2+m_3\)が最小となるものを求めよ。
条件\(C^{\prime}:\) \(m_1b, m_2a+m_3b, a+b+c\)がいずれも整数となる。
\((4)\) \(n\)を自然数とする。条件\(C\)を満たす\(f(x)\)のうち、\(f(1)=n\)となるものの個数を\(n\)を用いて表わせ。

方針

次の条件が同値であることに注意する。$$\begin{cases}a\in \mathbb{Z} \\ b\in \mathbb{Z}\end{cases}\iff \begin{cases}a\in \mathbb{Z}\\ a\pm b\in \mathbb{Z}\end{cases}$$

解答

\((1)\) 条件\(C\)が成り立つとき、\(f(1), f(2), f(-1)\)は整数である。$$\begin{cases}f(1)=a+b+c\in \mathbb{Z}\\ f(2)=4a+2b+c\in \mathbb{Z}\end{cases}\iff \begin{cases}f(1)=a+b+c\in \mathbb{Z}\\ f(2)-f(1)=3a+b\in \mathbb{Z}\end{cases}$$であるから、\(3a+b\)は整数になる。また、$$\begin{cases}f(-1)=a-b+c\in \mathbb{Z}\\ f(1)=a+b+c\in \mathbb{Z}\end{cases}\iff \begin{cases}f(-1)~a-b+c\in\mathbb{Z}\\ f(-1)+f(1)=2b\in \mathbb{Z}\end{cases}$$であるから、\(2b\)は整数である。すると、\(2(3a+b) = 6a+2b\)は整数、\(2b\)も整数だから、\(6a\)も整数である。したがって、$$\begin{eqnarray}g(x) & = & f(x+3)-f(x)\\ & = & a(x+3)^2+b(x+3)+c-ax^2-bx-c\\ & = & 6ax+3(3a+b)\end{eqnarray}$$は係数が整数である。\(a\ne 0\)だから\(1\)次式でもある。

\((2)\) \(f(1)=a+b+c=1\)である。両辺に\(2\)を掛けて、$$2a+2b+2c=2$$であるが、\((1)\)より\(2b\)は整数であり、\(a, b, c\)は正であるから、\(2b=1\)である。よって、\(\displaystyle b = \frac{1}{2}\)である。すると、\(\displaystyle a+c=\frac{1}{2}\)であるが、両辺に\(6\)を掛けて、$$6a+6c = 3$$である。\(6a\)は整数であり、\(a, c\)は正であるから、\((6a, 6c) = (1, 2), (2, 1)\)である。よって、\(\displaystyle (a, c) = \left(\frac{1}{6}, \frac{1}{3}\right), \left(\frac{1}{3}, \frac{1}{6}\right)\)である。以上より、\(\displaystyle f(x) = \frac{1}{6}x^2+\frac{1}{2}x+\frac{1}{3}, \frac{1}{3}x^2+\frac{1}{2}x+\frac{1}{6}\)であるが、このうち\(f(2)\)も整数になるのは\(\displaystyle \underline{f(x)=\frac{1}{6}x^2+\frac{1}{2}x+\frac{1}{3}}\)である。なお、\(f(1), f(2)\)が整数であり、\(g(x)=f(x+3)-f(x)\)は係数が整数であるから、上の\(f(x)\)について条件\(C\)は満たされている。

\((3)\) 条件\(C\)は次と同値である。$$\begin{cases}f(1)=a+b+c\in \mathbb{Z}\\ f(2) = 4a+2b+c\in \mathbb{Z}\\ g(x) = f(x+3)-f(x)\in \mathbb{Z}\ (x\equiv \pm1 \pmod{3})\end{cases}\iff \begin{cases}a+b+c\in \mathbb{Z}\\ f(2)-f(1) = 3a+b\in \mathbb{Z}\\ 6ax+3(3a+b)\in \mathbb{Z}\ (x\equiv \pm1 \pmod{3})\end{cases}$$\(3(3a+b)\)は整数であるから、\(3\)で割り切れないすべての整数\(x\)に対して、\(6ax\)が整数となるとき、\(6a\)は整数である。$$6a = 2(3a+b)-2b$$であり、\(3a+b\)は整数であるから、\(2b\)が整数である。以上より、\(\underline{(m_1, m_2, m_3) = (2, 3, 1)}\)である。

\((4)\) \((3)\)から\(2b, 3a+b, a+b+c\)は整数である。\(l, m\)を整数として、$$\begin{cases}2b = l\\ 3a+b = m\\ a+b+c = n\end{cases}$$とする。これを\(a, b, c\)について解くと、$$\begin{cases}\displaystyle a = \frac{2m-l}{6}\\ \displaystyle b = \frac{l}{2}\\ \displaystyle c = \frac{3n-l-m}{3}\end{cases}$$となる。\(a > 0, b > 0, c > 0\)となるような\(l, m\)の個数を求めればよい。\(a > 0, b > 0, c > 0\)は$$\begin{cases}0 < l < 2m\\ l+m < 3n\end{cases}$$である。\(m\)を固定して考える。
\((a)\) \(2m < 3n-m\)つまり\(m < n\)であるとき、\(0 < l < 2m < 3n-m\)であるから、\(l=1, 2, \cdots, 2m-1\)である。\(m=1, 2, \cdots, n-1\)として、$$\begin{eqnarray} & = & \sum_{m=1}^{n-1}{(2m-1)}\\ & = & (n-1)^2\end{eqnarray}$$である。
\((b)\) \(3n-m < 2m\)つまり\(m > n\)であるとき、\(0 < l<3n-m<2m\)であるから、\(l=1, 2, \cdots, 3n-m\)である。\(m=n+1, n+2m, \cdots, 3n-1\)として、$$\begin{eqnarray} & = & \sum_{m=n+1}^{3n-1}{(3n-m)}\\ & = & \sum_{m^{\prime}=1}^{2n-1}{(2n-m^{\prime})}\\ & = & \sum_{m^{\prime\prime}=1}^{2n-1}{m^{\prime\prime}}\\ & = & 2n^2-n\end{eqnarray}$$である。途中で\(m-n = m^{\prime}\)および\(2n-m^{\prime} = m^{\prime\prime}\)と置換した。

以上から、求める\(f(x)\)の個数は\((n-1)^2+2n^2-n = \underline{3n^2-3n+1}\)となる。

解説

過去の医科歯科大学の出題の中でもトップクラスの難問である。特に\((3)\)が難しい。条件\(C\)の意味が飲み込めず、手も足も出なかった受験生も多かったことだろう。なお、解答中の\(\mathbb{Z}\)は整数の集合を表す記号である。\(a\in \mathbb{Z}\)と書いたとき、\(a\)は整数であることを表す。

\((1)\) \(2\)つの数\(a, b\)が整数であるとき、\(a, a-b\)は整数である。逆に\(a, a-b\)が整数であるとき、\(b = -(a-b) +a\)は整数である。なので、\(a, b\)が整数\(\iff\)\(a, a-b\)が整数であるが成り立つ。条件\(C\)の意味は取りにくいが、とりあえず\(f(1), f(2)\)を考える。もしも\(g(x) = f(x+3)-f(x)\)が整数であるならば、\(x = 1\)を代入して、\(f(4) =g(1)+f(1)\)となり、\(g(1), f(1)\)はともに整数なので、\(f(4)\)は整数になる。同じように、\(f(7), f(10), \cdots\)もすべて整数になる。また、\(f(2)\)は整数なので、\(f(5) = g(2)+f(2)\)から\(f(5)\)も整数になる。同じく、\(f(8), f(11), \cdots\)もすべて整数になる。すなわち、条件\(C\)と\(f(1), f(2), g(x) = f(x+3)-f(x)\)整数であることは同値である。\((1)\)では単に\(g(x)\)が\(3\)の倍数でない整数\(x\)に対して整数であることを言うだけでなく、係数についても整数であることを示せと言っている。そのために、\(f(1), f(2), f(-1)\)を持ち出す。

\((2)\) \(2b\)が整数であることに気が付かないと時間がかかる。\((a, c)\)の組は\(2\)つ出てくるが、解答では条件である\(f(1)\)が整数であることと、\(g(x)\)の係数が整数であることしか使っていない。残りの条件\(f(2)\)が整数であることは使っていないので、最後に確認する必要がある。

\((3)\) \((1), (2)\)の流れの上にあるから、これがうまく解けなかった受験生には酷な問題である。同値変形について習熟したものでないと、すっきりとした解答を書くことが難しい。

\((4)\) 最後も簡単ではない。整式の問題だと思っていたのが、最後には場合の数の問題になってしまった。解答のように場合分けをしても良いし、\(lm\)平面を描いて図を見ながら解くのも良い。解答では$$1+3+5+\cdots + 2n-1 = n^2$$という三角数の公式を用いている。証明は帰納法によるが、このような重厚な問題ではスキップしても良いだろう。下のリンクも参照すると良い。

三角数 - Wikipedia

関連問題

1986年京都大学文理共通問題1 大小関係の感覚と不等式
1987年東京医科歯科大学数学問題2 場合の数と置き換え
1990年東京医科歯科大学数学問題2 多項式と数列
1991年京都大学理系後期数学理学部専用問題 整数係数多項式
1993年東京工業大学前期数学問題4 整数の値を取る多項式
2006年度前期東京医科歯科大学数学問題1 数列、場合の数、置き換え

関連リンク

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