[math]2005年東京医科歯科大学前期数学問題3

nurse taking sample from a patient math
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問題

次の条件\((i), (ii), (iii)\)を満たす関数\(f(x)\ (x > 0)\)を考える。
\((i)\) \(f(1) = 0\)
\((ii)\) 導関数\(f^{\prime}(x)\)が存在し、\(f^{\prime}(x) > 0\ (x > 0)\)。
\((iii)\) 第\(2\)次導関数\(f^{\prime\prime}(x)\)が存在し、\(f^{\prime\prime}(x) < 0\ (x > 0)\)。
このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(\displaystyle a\geq \frac{3}{2}\)のとき次の\(3\)数の大小を比較せよ。$$f(a), \frac{1}{2}\left(f\left(a-\frac{1}{2}\right)+f\left(a+\frac{1}{2}\right)\right), \int_{a-\frac{1}{2}}^{a+\frac{1}{2}}{f(x)dx}$$
\((2)\) 整数\(n \ (n\geq 2)\)に対して次の不等式が成立することを示せ。$$\int_{\frac{3}{2}}^{n}{f(x)dx} < \sum_{k=1}^{n-1}{f(k)} + \frac{1}{2}f(n) < \int_{1}^{n}{f(x)dx}$$
\((3)\) 次の極限値を求めよ。ただし\(\log\)は自然対数を表す。$$\lim_{n\to\infty}{\frac{n + \log{n!}-\log{n^n}}{\log{n}}}$$

方針

\((1)\)は関数の凸性を利用する。点\((a, f(a))\)における\(y = f(x)\)の接線を考えてみると良い。

解答

\((1)\) 条件\((i), (ii), (iii)\)から\(y = f(x)\)の概形は下のようになる。

\(y = f(x)\)の概形。\(f^{\prime\prime}(x) < 0\)より\(y = f(x)\)は上に凸となる。

図で台形\(ABCD\)の面積は\(\displaystyle \frac{1}{2}\left(f\left(a-\frac{1}{2}\right)+f\left(a+\frac{1}{2}\right)\right)\)となる。また、台形\(EFCD\)の面積は\(ED\)の長さが接線の方程式\(y = f^{\prime}(a)(x-a)+f(a)\)に\(\displaystyle x = a-\frac{1}{2}\)を代入して、\(\displaystyle -\frac{f^{\prime}(a)}{2}+f(a)\)であり、\(FC\)の長さが\(\displaystyle x = a+\frac{1}{2}\)を代入して\(\displaystyle \frac{f^{\prime}(a)}{2}+f(a)\)となるから、$$\left(\left(a+\frac{1}{2}\right)-\left(a-\frac{1}{2}\right)\right)\times \left(\left(-\frac{f^{\prime}(a)}{2}+f(a)\right)+\left(\frac{f^{\prime}(a)}{2}+f(a)\right)\right)\times \frac{1}{2} = f(a)$$となる。したがって、図を見ながら$$\underline{\frac{1}{2}\left(f\left(a-\frac{1}{2}\right)+f\left(a+\frac{1}{2}\right)\right) < \int_{a-\frac{1}{2}}^{a+\frac{1}{2}}{f(x)dx} < f(a)}$$が成り立つ。

\((2)\) \((1)\)の不等式の左側で\(\displaystyle a = \frac{3}{2}, \frac{5}{2}, \cdots, \frac{2n-1}{2}\)としたものを辺ごとに足すと、$$\frac{f(1)+f(2)}{2} + \frac{f(2)+f(3)}{2} + \cdots + \frac{f(n-1)+f(n)}{2} < \int_{1}^{n}{f(x)dx}$$である。\(f(1) = 0\)であるから、これから\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n-1}{f(k)}+\frac{1}{2}f(n) < \int_{1}^{n}{f(x)dx}\)が成り立つ。また、\((1)\)の不等式の右側で\(a = 2, 3, \cdots, n\)としたものを辺ごとに足すと、$$\int_{\frac{3}{2}}^{n + \frac{1}{2}}{f(x)dx} < f(2) + f(3) + \cdots + f(n)$$であるが、\(f(1) = 0\)であるから$$\int_{\frac{3}{2}}^{n}{f(x)dx} + \int_{n}^{n+\frac{1}{2}}{f(x)dx} < \sum_{k=1}^{n-1}{f(k)} + f(n)$$である。積分の平均値の定理から\(\displaystyle \int_{n}^{n+\frac{1}{2}}{f(x)dx} = \frac{1}{2}f(c)\)となる\(c\)が区間\(\displaystyle \left[n, n+\frac{1}{2}\right]\)に存在するが、\(f(x)\)は増加関数なので、\(\displaystyle \frac{1}{2}f(n)\leq \frac{1}{2}f(c)\)である。したがって、\(\displaystyle \int_{\frac{3}{2}}^{n}{f(x)dx}+\frac{1}{2}f(n) < \sum_{k=1}^{n-1}{f(k)} + f(n)\)であるから、題意の不等式の左側も成り立つ。

\((3)\) \(f(x) = \log{x}\ (x > 0)\)とすると、\(\displaystyle f(1) = 0, f^{\prime}(x) = \frac{1}{x} > 0, f^{\prime\prime}(x) = -\frac{1}{x^2} < 0\)となるから、これは条件\((i), (ii), (iii)\)を満たす。\((2)\)の不等式で\(f(x) =\log{x}\)として、$$\int_{\frac{3}{2}}^{n}{\log{x}dx} < \log{(n-1)!} + \frac{1}{2}\log{n} < \int_{1}^{n}{\log{x}dx}$$となる。\(\displaystyle \int{\log{x}dx} = x(\log{x}-1) + C\)を利用して積分を計算すると、$$n(\log{n}-1)-\frac{3}{2}\left(\log{\frac{3}{2}}-1\right) < n+\log{n!}-\log{n^n} < \frac{1}{2}\log{n} + 1$$を得る。両辺を\(\log{n}\ ( > 0)\)で割ってから\(n\to\infty\)とすることで、求める極限が\(\displaystyle \underline{\frac{1}{2}}\)であることがわかる。

解説

こちらの問題によく似てはいるが、本問題の方が難しい。

不等式と積分。

\((1)\)から躓いたものも多かったことだろう。面積に帰着させるというのはわかるが、\(\displaystyle \int_{a-\frac{1}{2}}^{a+\frac{1}{2}}{f(x)dx}\)と\(f(a)\)の大小を比べるのが難しい。接線を持ち出すことに気がつくかどうかが勝負の分かれ目になる。なお、同様に接線を持ち出すことで解決する問題が、東京大学で2年後に出題されている。

接線を考えることで話が進む。

\((2)\)もそのまま\((1)\)を利用しておしまい、とはいかず、もうワンステップ、積分の平均値の定理を持ち出す必要がある。

\((3)\)は\((2)\)までできればおまけの問題。こんな極限を自分で求めようと思ってもなかなか難しいので、面白い問題ではある。

関連問題

1988年東京工業大学数学問題1 はさみうちの原理
1992年東京医科歯科大学前期数学問題1 不等式と積分、はさみうちの原理
1997年東京工業大学理系前期数学問題2 区分求積法とはさみうちの原理
2007年東京大学前期理系数学問題6 関数の凸性、面積の不等式と対数の値の評価

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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