[math]2000年東京医科歯科大学数学問題2

syringe floating near person s hand math
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問題

座標平面上にベクトル\(\overrightarrow{a} = (2, 1), \overrightarrow{b} = (1, 4), \overrightarrow{c} = (2, 3), \overrightarrow{d} = (3, 3)\)が与えられている。以下のそれぞれについて、点\(P\)が動く領域を座標平面上に図示せよ。
\((1)\) 実数\(r, s\)が\(\displaystyle \frac{1}{2}\leq r+s\leq 1, r\geq 0, s\geq 0\)を満たしながら動くとき、ベクトル\(\overrightarrow{p} = r\overrightarrow{a} + s\overrightarrow{b}\)を位置ベクトルとする点\(P\)。
\((2)\) 実数\(r, s, t\)が\(r + s + t = 1, r\geq 0, s\geq 0, t \geq 0\)を満たしながら動くとき、ベクトル\(\overrightarrow{p} = r\overrightarrow{a}+s\overrightarrow{b}-t\overrightarrow{c}\)を位置ベクトルとする点\(P\)。
\((3)\) 実数\(r, t, s, u\)が\(1\leq r+s+t+u \leq 2, r\geq 0, s\geq 0, t\geq 0, u\geq 0\)を満たしながら動くとき、ベクトル\(\overrightarrow{p} = r\overrightarrow{a}+s\overrightarrow{b} + t\overrightarrow{c}+u\overrightarrow{d}\)を位置ベクトルとする点\(P\)。

方針

見た目はべクトルの問題であるが、そのままべクトルを用いて解答するよりも、座標の問題と考えると、楽に解くことが出来る。

解答

\((1)\) \(\overrightarrow{p} = (x, y)\)とすると、\((x, y) = r\overrightarrow{a}+s\overrightarrow{b} = (2r+s, r+4s)\)となる。これを\(r, s\)について解くと、\(\displaystyle r = \frac{4x-y}{7}, s = \frac{-x+2y}{7}\)となる。条件\(\displaystyle \frac{1}{2}\leq r+s \leq 1, r\geq 0, s\geq 0\)に代入して整理すると、$$\begin{cases}\displaystyle 3x-7\leq y\leq 3x-\frac{7}{2}\\ \displaystyle \frac{x}{2}\leq y\leq 4x\end{cases}$$となる。\(xy\)平面に図示すると、次の図の斜線部のようになる。ただし、領域はすべて含む。

\((1)\)の解答図。

\((2)\) \(r + s + t = 1\)から\(t = 1-r-s\)となる。これを\(t\geq 0\)に代入して、\(r + s\leq 1\)となる。$$\begin{eqnarray}\overrightarrow{p} & = & r\overrightarrow{a}+s\overrightarrow{b}-t\overrightarrow{c} \\ & = & r\overrightarrow{a} + s\overrightarrow{b}-(1-r-s)\overrightarrow{c} \\ & = & r(2, 1)+s(1, 4)-(1-r-s)(2, 3)\\ & = & (4r+3s-2, 4r+7s-3)\end{eqnarray}$$となる。\(\overrightarrow{p} = (x, y)\)として、これを\(r, s\)について解くと、\(\displaystyle r = \frac{7x-3y+5}{16}, s = \frac{-x+y+1}{4}\)となる。\(r + s\leq 1, r\geq 0, s\geq 0\)に代入して整理すると、\(\displaystyle y\leq -3x+7, x-1\leq y\leq \frac{7x+5}{3}\)となる。これを\(xy\)平面に図示すると、次の図の斜線部のようになる。ただし、境界はすべて含む。

\((2)\)の解答図。

\((3)\) まず\(r + s + t + u = 1\)のときを考える。このとき\(u = 1-r-s-t\)で、これを\(u \geq 0\)に代入して\(r + s + t \leq 1\)となる。$$\begin{eqnarray}\overrightarrow{p} & = & r\overrightarrow{a}+s\overrightarrow{b} + t\overrightarrow{c} + u\overrightarrow{d}\\ & = & r\overrightarrow{a} + s\overrightarrow{b} + t\overrightarrow{c} + (1-r-s-t)\overrightarrow{d}\\ & = & r(2, 1) + s(1, 4) + t(2, 3) + (1-r-s-t)(3, 3)\\ & = & (-r-2s-t+3, -2r + s+3)\end{eqnarray}$$である。\(\overrightarrow{p} = (x, y)\)としてこれを\(r, s\)について解くと、\(\displaystyle r = \frac{-x-2y-t+9}{5}, s = \frac{-2x +y -2t + 3}{5}\)となる。これを\(r + s + t\leq 1, r\geq 0, s\geq 0\)に代入して整理すると、\(\displaystyle y\geq -3x+2t+7, 2x+3t-3\leq y\leq \frac{-x-t+9}{2}\)となる。\(0\leq t\leq 1\)だから、結局\(\displaystyle y\geq -3x+7, 2x-3 \leq y \leq \frac{-x+9}{2}\)となる。これを図示すると下の図の斜線部のようになる。ただし、境界はすべて含む。

\(r + s + t + u = 1\)のときの点\(P\)が動く範囲。

以上をもとに、\(r + s + t + u = 1\)以外のときを考える。$$\overrightarrow{p} = (r+s+t+y)\left(\frac{r\overrightarrow{a} + s\overrightarrow{b} + t\overrightarrow{c} + u\overrightarrow{d}}{r+s+t+u}\right)$$であり、\(\displaystyle \frac{r+s+t+u}{r+s+t+u} = 1, \frac{r}{r+s+t+u}\geq 0, \frac{s}{r+s+t+u}, \frac{t}{r+s+t+u}\geq 0, \frac{u}{r+s+t+u}\geq 0\)であるから、ベクトル\(\displaystyle \frac{\overrightarrow{p}}{r+s+t+u}\)は上で描いた三角形と同じ領域を動く。よって、\(1\leq r+s+t+u\leq 2\)であるから、\(\overrightarrow{p}\)の動く領域は上で描いた三角形を原点を中心に\(1\)倍から\(2\)倍まで相似拡大するときに通る領域である。図示すると下の図のようになる。ただし、境界はすべて含む。また、太線部は\(r + s + t + u = 1\)のときに\(\overrightarrow{p}\)が動く領域である。

\((3)\)の解答図。太線部は\(r + s + t + u = 1\)のときに点\(P\)が動く領域である。

解説

難問である。\((1), (2)\)も、べクトルを用いて解くこともでき、どんな方法でも比較的簡単に解くことが可能である。解答では\((3)\)を意識してあえて座標の問題として解いている。\((3)\)をべクトルで解こうとすると巧妙な方法で説明しなくてはいけなくなり、医科歯科大の数学の試験時間(\(3\)題で\(90\)分)を考えるとなかなか厳しい。実際に図は書けたけれどもうまく説明ができずは出来なかったという受験生も多かったようである。出来たつもりだったのに後で入試の開示得点を見て思っていたよりも点が取れておらずビックリした受験生も多かったことだろう。解答のように座標の問題と捉えると計算は確かに面倒くさいが、機械的に解くことができる。試験場では意外と大事なポイントで、巧妙に説明しなくてはいけないような問題でも多少時間を掛けさえすれば解くことが出来る手段を持っていることは、精神的に大分楽になるだろう。\(4\)文字現れているので、取りあえず\(r+s+t+u\)を固定して後で動かすことにする。この状態で\(1\)文字\(u\)を消去してさらに\(r, s\)を消去すると\(y\)が\(t\)の一次関数に挟まれた形になってでてくる。\(t\)は\(0\)から\(1\)まで自由に動くので、この範囲のどんな\(t\)に対しても不等式を満たす\(y\)が存在する条件を求めるという考え方で良い。その後で\(r + s + t + u\)を動かせば解決である。高校数学の魅力の一つが巧妙な補助線を引かなければいけなかった図形の問題がべクトルや座標を使うことによって機械的に解くことが出来ることだと思う。その中でも特に座標平面を用いる手法は説明しにくい問題を論理的に誤りを犯すことなく処理できる魅力がある。べクトルの問題だからといってべクトルに拘泥するのではなく、臨機応変に様々な手法を試してみることが必要で、そのために一つの問題に対して様々な別解を考えてみる練習が効果的である。

関連問題

1997年東京大学文系前期問題4 直線の動く領域、包絡線
2015年東京大学理系数学問題1 領域の図示、存在証明、2次方程式の解の配置
2022年京都大学理系数学問題4 空間ベクトル

関連リンク

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