前回は速度は加速度の時間微分として定義されることを確認した。
定義
加速度を定義する。これは簡単で、加速度は速度の微分として定義される。式で書くと、ある時刻\(t\)における点\(P\)の速度がベクトル\(\overrightarrow{v}\)と表されるとき、加速度\(\overrightarrow{a}\)は$$\overrightarrow{a} = \frac{d\overrightarrow{v}}{dt}$$で定義される。点\(P\)が二次元平面の点であるならば、\(v = (v_x, v_y)\)として、加速度は$$\left(\frac{dv_x}{dt}, \frac{dv_y}{dt}\right)$$である。\(3\)次元以上でも同様である。速度はベクトルなので、速度を微分した加速度もベクトルになる。ベクトルとは、普通の数のように単なる数字なのではなく、向きと大きさが定まった計量数として加速度が定義されているということである。普通の数の場合備えている性質は大きさのみで向きという性質は持ち合わせていない。
加速度の定義について補足
加速度についてはこれで全てである。加速度というのは単なる定義に過ぎない。速度の微分が加速度」というのは何かから導かれる結論ではなく、ただ単に事実を述べているだけである。天下り的に今までの日常生活で触れたことの無い加速度という概念が登場するから、混乱してしまうだけである。新しい英単語が出てきたときと同じように意味とスペルさえ覚えてしまえば良い。文章の中での使い方は後で幾らでも覚える機会がある。
繰り返しになるが、数学や物理を勉強するときには、何が定義で何が定義から導かれる定理なのかを、しつこいくらい意識する必要がある。特に物理学は海外から輸入された学問であるからどうしても語と語の対応が完全ではない部分を残している。大学に進学した後で難しい用語が出てきたときでも日本語に引きずられて妙な連想を膨らませることなく単なる定義に過ぎないということを個々のケースで理解できればいらないところで躓くことは少なくなっていくことだろう。
加速度の意味
速度の記事で書いたように、速度のグラフを書いたときにその傾きは加速度になっている。意味づけとしては、微小時間の間にどれだけ速度が増えるかというのを表す量が加速度になる。つまり、位置の二階微分が加速度になる。ある点\(P\)の時刻\(t\)における位置が\((x(t), y(t))\)で表されるとき、点\(P\)の時刻\(t\)における加速度は$$\left(\frac{d^2x(t)}{dt^2}, \frac{d^2y(t)}{dt^2}\right)$$となる。必要に応じて、速度の一階(時間)微分としての加速度か、位置の二階(時間)微分としての加速度かのどちらかの表記を用いる。
加速度の時間微分
では素朴な疑問として加速度を時間微分したものは何か?と考えたものもいるだろう。物理学ではそんなものも定義されていて、加速度の一階微分を躍度(やくど)と呼んでいる。
躍度は大学の物理科や工学部の専門分野に進まない限りまず目にすることは無いだろう。
全体の位置のまとめ
一度ここでどこに向かっているのかを確認しておこう。ニュートン力学の大きな目標が、物体の運動について知りうる限りを記述するということがあった。目で見て観測して全てを知ることができればよいがそうはいかない。観測には時間も金銭も要する。例えばある角度でミサイルを打ち出したときにどこに到達するのかという情報が必要である場合何回も実験して観測するわけにはいかない。そこである種の物理量、例えば速度や加速度についてなんらかの関係式があるならば、速度は位置の一階微分、加速度は位置の二階微分であるので、微分方程式を解くことによって位置についての詳しい情報を得ることができる。加速度についての関係式というのが、偶々存在して、それが今まで問題にしてきたNewtonの運動方程式という訳である。
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