医療における子ども憲章
小児科学会のサイトはこちら。大きいポスターも届いたので家に貼ってみた。
人として大切にされ、自分らしく生きる権利
1. あなたは、病気や障害、年齢に関係なく、人として大切にされ、あなたらしく生きる権利を持っています。
子どもにとって一番よいこと(子どもの最善の利益)を考えてもらう権利
2. あなたは、医療の場であなたに関係することが決められるとき、すべてにおいて、周囲のおとなにそれが「あなたにとってもっとも良いことか」を第一に考えてもらえる権利を持っています。
安心・安全な環境で生活する権利
3. あなたはいつでも自分らしく健やかでいられるように、安心・安全な環境で生活できるよう支えられる権利を持っています。もし、あなたが病気になったときには、安心・安全な場で、できるだけ不安のないようなやり方で医療ケア(こころやからだの健康のために必要なお世話)を受けられます。
病院などで親や大切な人といっしょにいる権利
4. あなたは、医療をうけるとき、お父さん、お母さん、またはそれに代わる人とできる限りいっしょにいることができます。
必要なことを教えてもらい、自分の気持・希望・意見を伝える権利
5. あなたは、自分の健康を守るためのすべての情報について、あなたにわかりやすい方法で、説明をうける権利を持っています。そして、あなた自身の方法で、自分の意志や意見を伝える権利を持っていて、できるだけその気持・希望・意見の通りにできるように努力してもらえます。
希望どおりにならなかったときに理由を説明してもらう権利
6. あなたの気持ち・希望・意見の通りにすることができない場合は、なぜそうなったのか、その理由などについてわかりやすい説明を受けたり、その理由が納得できないときには、さらにあなたの意見を伝えたりする機会があります。
差別されず、こころやからだを傷つけられない権利
7. あなたは、病気や障害、その他あらゆる面において差別されることなく、あなたのこころやからだを傷つけるあらゆる行為から守られます。
自分のことを勝手にだれかに言われない権利
8. あなたのからだや病気のことは、あなたにとって大切な情報であり、あなたのものです。あなたらしく生活することを守るために、あなたのからだや病気、障害に関することが他のひとに伝わらないように守られます。また、だれかがあなたのからだや病気、障害のことを他のひとに伝える必要があるときには、その理由とともに伝えてよいかをあなたに確認をします。
病気のときも遊んだり勉強したりする権利
9. あなたは、病気や障害の有無に関わらず、そして入院中や災害などを含むどんなときも、年齢や症状にあった遊ぶ権利と学ぶ権利を持っていて、あなたらしく生活することができます。
訓練を受けた専門的なスタッフから治療とケアを受ける権利
10. あなたは、必要な訓練を受け、技術を身につけたスタッフによって医療やケア(気配り、世話など)を受ける権利を持っています。
今だけではなく、将来も続けて医療やケアを受ける権利
11. あなたは継続的な医療やケア(気配り、世話など)を受けることができます。また、日々の生活の中でさまざまな立場のおとなに支えてもらう権利を持っています。
病棟の思い出
こども病院に勤めていた頃、重症の脳炎で、「昨日までは普通に生活していた」けれど、ある日突然24時間けいれんを繰り返し、寝たきりになってしまいPICU(小児のICU、集中治療室)に入院していた子がいた。
本来であれば両親が毎日面会に来て、手を握ったり顔を見たりすることができるはずなんだけど、ちょうど新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、PICUも感染を防ぐため一切面会禁止になってしまった。その事自体は今考えても、仕方がないのかなと思う。
結局その子は数か月PICUに入院して、PICUの先生たちはかなりけいれんのコントロールに難渋していたんだけど、その間両親は一切状況がわからないまま、一緒に一般病棟に転床してきた。担当医(の一人)になった自分は、その子の医学的な状況や今後の見通し、治療についてなかなか分かってもらえなくて苦労したのを覚えている。考えてみれば当然で、まさか昨日まで元気に学校に行っていた我が子が、寝たきりの障害者になり、元通り生活できる可能性がゼロに等しいだなんて受け入れられるはずがない。
その子の父親はPICUにいる間、面会できないことに対してものすごく怒っていたし、母親もとても悲しんでいた。自分だって、自分の子どもが重症で入院しているのに、一切面会はできませんと言われたらものすごく怒るだろうと思う。
医療における子ども憲章、特に4を読んで、なぜかそのことを鮮明に思い出した。
強い社会
筑波大学の山海先生が雑誌のインタビューで、「強い社会を作りたい」と仰っていたことがある。山海先生と言ってもすぐ分かる人は少ないかも知れないが、ロボットスーツHALの開発者というとピンとくる人も多いだろう。この言葉だけを切り取ってしまうと、もしかしたら嫌悪感を抱く人もいるのかもわからないが、山海先生が続けて述べられたのはこうだ。
強い社会を作りたい。強い社会というのは、強い人間だけが暮らす社会ではない。弱い人間も強い人間も一緒に暮らしていける社会が、強い社会だ。
山海嘉之
自分はいつ病気になったり事故にあうか分からないし、小児科医なので、強い人間だけが暮らす社会で生きていきたいと思わない。自分の子どもたちにも強い人間だけが暮らす社会を作って欲しいと思えない。
学びの意味
もう一つ引用になるが、東京大学の佐藤学先生がこんな事を仰っていた。
自分の幸せは自分の生きる社会に暮らす無数の他人の幸せとつながっている
佐藤学
医療における子供の憲章について
自分にとってはこの憲章は山海先生や佐藤先生の言葉と同じ様にとても大事だと思うので、ここに忘れないようにお気持ちを表明しておく。
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