[math][東京医科歯科大学][微分]2006年東京医科歯科大学数学問題3

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問題

次の各問いに答えよ。
\((1)\) 関数\(g(x) = \log{(x+\sqrt{x^2+1})}\)の導関数\(g^{\prime}(x)\)を求めよ。
\((2)\) 次の\(2\)条件\((a), (b)\)を満たす微分可能な関数\(\phi (x)\)およびその逆関数\(h(x)\)を求めよ。
\(\ \ \) \((a)\) \(\phi (0) = 0\)
\(\ \ \) \((b)\) \(\displaystyle \phi^{\prime}(x) = \frac{1}{\sqrt{x^2+1}}\)
\((3)\) 次の\(4\)条件\((a), (b), (c), (d)\)を満たす微分可能な関数\(f(x)\)を求めよ。
\(\ \ \) \((a)\) \(f(0) = 1\)
\(\ \ \) \((b)\) \(f^{\prime}(0) = 0\)
\(\ \ \) \((c)\) すべての実数\(\alpha\)に対して\(f(\alpha) = f(-\alpha)\)が成立する。
\(\ \ \) \((d)\) 正の実数\(t\)に対して座標平面上の曲線\(y = f(x)\ \ (0\leq x\leq t)\)の長さを\(l(t)\)と表すとき、すべての正の実数\(t\)に対して\(l(t) = f^{\prime}(t)\)が成立する。

方針

\((3)\) 慣れていないとやや難しく感じるかもしれない。\((1), (2)\)をうまく利用するために、\(F(x) = \log{(f^{\prime}(x) + \sqrt{1+(f^{\prime}(x))^2})}\)と置いてみるとよい。

解答

\((1)\) $$\begin{eqnarray}g^{\prime}(x) & = & \frac{1+\frac{x}{\sqrt{x^2+1}}}{x+\sqrt{x^2+1}}\\ & = & \underline{\frac{1}{\sqrt{x^2+1}}}\end{eqnarray}$$である。

\((2)\) \((1)\)から\(\phi (x) = \log{(x+\sqrt{x^2+1})} + C\)とおける。ただし、\(C\)は積分定数である。\(\phi (0) = 0\)であるから、\(C = 0\)である。よって、\(\underline{\phi (x) = \log{(x+\sqrt{x^2+1})}}\)である。これを\(y\)とすると、$$\begin{eqnarray}y & = & \log{(x+\sqrt{x^2+1})}\\ e^y & = & x+\sqrt{x^2+1}\\ e^y-x & = & \sqrt{x^2+1}\end{eqnarray}$$となる。両辺を二乗して、$$\begin{eqnarray}e^{2y}-2xe^y+x^2 & = & x^2+1\\ 2e^yx & = & e^{2y}-1\\ x & = & \frac{e^y-e^{-y}}{2}\end{eqnarray}$$となる。よって、\(\phi (x)\)の逆関数\(h(x)\)は、\(\displaystyle \underline{h(x) = \frac{e^{x}-e^{-x}}{2}}\)となる。

\((3)\) \(t > 0\)のとき、曲線の長さの公式から、$$l(t) = \int_{0}^{t}{\sqrt{1+(f^{\prime}(x))^2}dx}$$であるから、条件\((d)\)から$$f^{\prime}(t) = \int_{0}^{t}{\sqrt{1+(f^{\prime}(t))^2}dx}\ \ (t > 0)$$である。条件\((b)\)からこれは\(t = 0\)で成り立つ。この式の両辺を\(t\)で微分して、$$f^{\prime\prime}(t) = \sqrt{1+(f^{\prime}(t))^2}\ \ (t\geq 0)$$がわかる。条件\((c)\)から\(f(x) = f(-x)\)がどんな実数\(x\)についても成り立つから、微分を繰り返して\(f^{\prime}(x) = -f^{\prime}(-x), f^{\prime\prime}(x) = f^{\prime\prime}(-x)\)である。つまり、\(t\geq 0\)に対して、$$f^{\prime\prime}(t) = \sqrt{1+(f^{\prime}(t))^2} \ \ \tag{a}\label{a}$$であれば、\(t\leq 0\)に対してもこれが成り立つ。以下、\(t\)は正とは限らない任意の実数とする。さて、\(F(x) = \log{(f^{\prime}(x) + \sqrt{1+(f^{\prime}(x))^2})}\)とすると、\((1)\)と同様に$$\begin{eqnarray}F^{\prime}(x) & = & \frac{f^{\prime\prime}(x) + \frac{f^{\prime}(x)f^{\prime\prime}(x)}{\sqrt{1+(f^{\prime}(x))^2}}}{f^{\prime}(x) + \sqrt{1+(f^{\prime}(x))^2}}\\ & = & \frac{f^{\prime\prime}(x)}{\sqrt{1+(f^{\prime}(x))^2}}\end{eqnarray}$$となるが、\eqref{a}から$$F^{\prime}(x) = 1$$となる。したがって、\(F(x) = x + C^{\prime}\)となる(\(C^{\prime}\)は積分定数)が、条件\((b)\)から\(f^{\prime}(0) = 0\)であるので、\(F(0) = 0\)となり、\(C^{\prime} = 0\)がわかる。すなわち、\(F(x) = x\)である。以上から、$$x = \log{(f^{\prime}(x) + \sqrt{1+(f^{\prime}(x))^2})}$$となる。これは、\((2)\)から$$f^{\prime}(x) = \frac{e^{x}-e^{-x}}{2}$$となる。この式を積分すると、$$f(x) = \frac{e^{x}+e^{-x}}{2} + C^{\prime\prime}$$である。ただし\(C^{\prime\prime}\)は積分定数である。条件\((a)\)から\(f(0) = 1\)であるから、\(C^{\prime\prime} = 0\)がわかる。以上より、\(\displaystyle \underline{f(x) = \frac{e^{x}+e^{-x}}{2}}\)である。

解説

\((3)\) まず曲線の長さの公式から復習してみよう。平面上の点\((x, y)\)に対して、点が微小な距離だけ動いた\((x+dx, y+dy)\)を考えてみる。下図から、この点が動いた距離は三平方の定理を用いて、$$\sqrt{((x+dx)-x)^2+((y+dy)-y)^2} = \sqrt{(dx)^2+(dy)^2}$$となる。

点線の部分が点が微小な距離だけ動いた長さになる。

したがって、曲線の動いた距離はこれを積分した$$\int{\sqrt{(dx)^2+(dy)^2}} = \int{\sqrt{1+\left(\frac{dy}{dx}\right)^2}dx}$$となる。考え方も含めて過程を覚えておくと良い。

なお、パラメータ表示された曲線\((x(t), y(t))\ \ (a\leq t\leq b)\)が動く曲線の長さは$$\int_{a}^{b}{\sqrt{(x^{\prime}(t))^2+(y^{\prime}(t))^2}dt}$$となる。これも併せて覚えておくと良い。

本題に戻ると、本問題では指示に従って立式すると$$f^{\prime}(t) = \int_{0}^{t}{\sqrt{1+(f^{\prime}(t))^2}dt}$$となる。ただし\(t > 0\)であることに注意する。条件をもう一度見直すと、条件\((c)\)からこの関係式はすべての実数\(t\)に拡張できることが言える。細かい議論になるのでこの部分で減点されてしまった受験生も多かったことだろう。

このような問題を解くことを微分方程式という。解答では\(F(x)\)というやや人工的な関数を持ち出して微分することで解決を図っている。与えられた条件をもう一度微分すると\(F^{\prime}(x) = 1\)であることがわかる。なお、以下のように微分方程式を解いても構わないだろう。

\(f^{\prime}(x) = y\)とすると、$$y = \int{\sqrt{1+y^2}dt}$$であるから、\(x\)で微分して$$y^{\prime} = \sqrt{1+y^2}$$である。つまり、$$\begin{eqnarray}\frac{dy}{dx} & = & \sqrt{1+y^2}\\ dx & = & \frac{dy}{\sqrt{1+y^2}}\end{eqnarray}$$である。両辺を微分すると、\((1)\)から$$x = \log{(y+\sqrt{1+y^2})} + C$$となる(\(C\)は積分定数)。条件\((b)\)から\(C = 0\)がわかり、\((2)\)から\(\displaystyle y = \frac{e^{-x}-e^{-x}}{2}\)である(以下略)。

解答の関数\(\displaystyle f(x) = \frac{e^x+e^{-x}}{2}\)は双曲線関数と呼ばれ、三角関数と良く似た性質を有する。本問題のように\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{x^2+1}}, \sqrt{x^2+1}\)の積分と絡めて大学入試でよく出題される。

関連問題

1988東京医科歯科大学数学問題1 二次曲線と面積、微分
2002年京都大学理系数学第4問 微分、積分、曲線の長さ
2021年東京医科歯科大学医学科数学問題3 二次曲線と接線、双曲線

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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