[math][東京医科歯科大学][微分]2002年東京医科歯科大学数学問題3

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問題

正の整数\(n\)に対し、関数\(f_n(x)\)を次式で定義する。$$f_n(x) = \int_{1}^{x}{(x-t)^ne^{t}dt}$$(\(e\)は自然対数の底)。このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(f_1(x), f_2(x)\)を求めよ。
\((2)\) \(n\geq 2\)のとき、\(f_n(x)-nf_{n-1}(x)\)を求めよ。
\((3)\) \(f_n(x)-f_{n}^{\prime}(x)\)を求めよ。ここで\(f_{n}^{\prime}(x)\)は\(f_n(x)\)の導関数を表す。
\((4)\) \(n\geq 2\)のとき、\(f_n(x)\)を続けて\((n-1)\)回微分して得られる関数を求めよ。

方針

比較的よく見かけるタイプの問題と言っていい。

解答

\((1)\) $$\begin{eqnarray}f_1(x) & = & \int_{1}^{x}{(x-t)e^{t}dt}\\ & = & x[e^t]_{1}^{x}-\int_{1}^{x}{te^tdt}\\ & = & xe^x-ex-[(t-1)e^{t}]_{1}^{x}\\ & = & xe^x-ex-(x-1)e^x\\ & = & \underline{e^x-ex}\\ f_2(x) & = & \int_{1}^{x}{(x-t)^2dt}\\ & = & [(x-t)^2e^t]_{1}^{x}-\int_{1}^{x}{(-1)\cdot 2(x-t)e^tdt}\\ & = & -(x-1)^2e+e\int_{1}^{x}{(x-t)e^tdt}\\ & = & -(x-1)^2e+2f_1(x)\\ & = & -(x-1)^2e+2(e^x-ex)\\ & = & \underline{-x^2e+2e^x-e}\end{eqnarray}$$となる。

\((2)\) 部分積分法により、\(n\geq 2\)のとき、$$\begin{eqnarray}f_n(x) & = & \int_{1}^{x}{(x-t)^ne^tdt}\\ & = & [(x-t)^ne^t]_{1}^{x}-\int_{1}^{x}{(-1)\cdot n(x-t)^{n-1}e^tdt}\\ & = & -(x-1)^ne+n\int_{1}^{x}{(x-t)^{n-1}e^tdt}\\ & = & -(x-1)^ne+nf_{n-1}(x)\end{eqnarray}$$となる。よって\(f_n(x)-nf_{n-1}(x) = \underline{-(x-1)^ne}\)となる。

\((3)\) $$f_n(x) = \int_{1}^{x}{(x-t)^ne^tdt}$$で\(x-t = s\)と置換すると、$$\begin{eqnarray}f_n(x) & = & \int_{x-1}^{0}{s^ne^{x-s}(-ds)}\\ & = & e^x\int_{0}^{x-1}{s^ne^{-s}ds}\end{eqnarray}$$である。したがって、$$\begin{eqnarray}f_{n}^{\prime}(x) & = & e^x\int_{0}^{x-1}{s^ne^{-s}ds} + e^x(x-1)^ne^{-(x-1)}\\ & = & f_n(x)+e^x(x-1)^ne\end{eqnarray}$$である。これから\(f_n(x)-f_{n}^{\prime}(x) = \underline{-(x-1)^ne}\)となる。

\((4)\) \((2), (3)\)から\(n\geq 2\)のとき\(f_n^{\prime}(x) = nf_{n-1}(x)\)がわかる。この式を\(n\)回微分して、$$\begin{eqnarray}f_{n}^{(n-1)}(x) & = & n\cdot n-1\cdots 2\cdot f_1(x)\\ & = & \underline{n!(e^x-ex)}\end{eqnarray}$$となる。

解説

\((1)\) これは単なる計算なので、ミスがないように気をつける。

\((2)\) 部分積分法を用いる。\((x-t)^n\)を\(t\)で微分したときにマイナスが現れることに注意する。

\((3)\) \((2)\)を用いると話が少しややこしくなる。できないことはないが、ここは簡単に置換してみると良い。\((3)\)を解く前から置換した、という受験生も多かったという話である。

\((4)\) \((2), (3)\)の結果から、\(f_n^{\prime}(x) = nf_{n-1}(x)\)がわかる。後はこれをどんどん微分していけば良い。

発展になるが、\(f_n(x) = n!f_1(x)\)はよく見ると階乗の形をしている。\(f_n(x)\)と似た形の$$\Gamma(z) = \int_{0}^{\infty}{t^{s-1}e^{-t}dt}$$はガンマ関数と呼ばれ、階乗の実数への自然な拡張となっている。この関数は\(\Gamma(z) = (z-1)\Gamma(z-1)\)および\(\Gamma(1) = 1\)を満たす。ただし、\(z\)は複素数で実部は正とする。\(z\)が自然数のときは我々がよく知る階乗と一致する。

関連問題

1972年東京医科歯科大学数学問題 部分積分法と積分の漸化式
1990年東京工業大学後期数学問題2 Basel問題とゼータ関数について
1994年京都大学後期理系問題6 部分積分法、積分の漸化式、\((\log{x})^n\)の積分
1999年前期京都大学理系数学問題3 ゼータ関数の特殊な値と積分評価について
2005年前期東京大学理系数学問題1 微分と数列、\((-1)^n\)の現れる漸化式

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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