問題
関数\(f(x) = \log{(x+\sqrt{x^2-1})}\ \ (x\geq 1)\)およびその逆関数\(g(x)\ \ (x\geq 0)\)のグラフをそれぞれ\(C_1, C_2\)とする。
\((1)\) \(C_1\)上の点\((a, f(a))\)における\(C_1\)の法線\(l_1\)と\(C_2\)上の点\((f(b), b)\)における\(C_2\)の法線\(l_2\)が平行であるとき、\(a\)を用いて\(b\)を表わせ。
\((2)\) 点\((g(1), 1)\)における\(C_1\)の法線\(l\)と曲線\(C_1\)および\(x\)軸とで囲まれる図形の面積を求めよ。
\((3)\) 点\(P\)が\(C_1\)上を、点\(Q\)が\(C_2\)上をそれぞれ動くとき、線分\(PQ\)の長さの最小値を求めよ。
方針
逆関数の微分やグラフの利用、面積の積分計算などを含む総合的な問題である。受験生の実力をよく図れる問題であろう。
解答
\((1)\) $$\begin{eqnarray}f^{\prime}(x) & = & \frac{1+\frac{x}{\sqrt{x^2-1}}}{x+\sqrt{x^2-1}}\\ & = & \frac{1}{\sqrt{x^2-1}}\end{eqnarray}$$である。また、$$\begin{eqnarray}g^{\prime}(x) & = & (f^{-1}(x))^{\prime}\\ & = & \frac{1}{\frac{dy}{dx}}\\ & = & \sqrt{y^2-1}\end{eqnarray}$$である。\(l_1, l_2\)が平行なとき、$$\frac{1}{\sqrt{a^2-1}} = \sqrt{b^2-1}$$である。両辺を二乗して整理すると、\(\displaystyle b^2 = \frac{a^2}{a^2-1}\)となる。\(b > 0\)であるから、\(\displaystyle \underline{b = \frac{a}{\sqrt{a^2-1}}}\)となる。
\((2)\) 最初に\(g(x)\)を求める。\(y = \log{(x+\sqrt{x^2-1})}\ \ (x\geq 1)\)とすると、$$\begin{eqnarray}y & = & \log{(x+\sqrt{x^2-1})}\\ e^y & = & x+\sqrt{x^2-1}\\ e^y-x & = & \sqrt{x^2-1}\end{eqnarray}$$である。両辺を二乗して、$$\begin{eqnarray}e^{2y}-2xe^y+x^2 & = & x^2-1\\ 2xe^y & = & e^{2y} +1\\ x & = & \frac{e^{y}+e^{-y}}{2}\end{eqnarray}$$となる。したがって、\(\displaystyle g(x) = \frac{e^{x} + e^{-x}}{2}\ \ (x\geq 0)\)となる。点\((g(1), 1)\)における\(C_1\)の法線\(l\)と曲線\(C_1\)および\(x\)軸とで囲まれる図形の面積は、点\((1, g(1)\)における\(C_2\)の法線\(l^{\prime}\)と曲線\(C_2\)および\(y\)軸とで囲まれる図形の面積と等しい。\(\displaystyle g^{\prime}(x) = \frac{e^{x}-e^{-x}}{2}\)に注意すると、\(l^{\prime}\)の傾きは\(\displaystyle -\frac{1}{g^{\prime}(1)} = -\frac{2}{e-e^{-1}}\)となる。したがって、\(l^{\prime}\)の方程式は$$l:\ \ y = -\frac{2}{e-e^{-1}}(x-1) + g(1)$$となる。これから求める図形の面積を\(S\)とすると、$$\begin{eqnarray}S & = & \int_{0}^{1}{\left(-\frac{2}{e-e^{-1}}(x-1)+\frac{e+e^{-1}}{2}-g(x)\right)dx}\\ & = & -\frac{2}{e-e^{-1}}\left[\frac{(x-1)^2}{2}\right]_{0}^{1}+\frac{e+e^{-1}}{2}-\left[\frac{e^x-e^{-x}}{2}\right]_{0}^{1}\\ & = & \frac{1}{e-e^{-1}}+\frac{e+e^{-1}}{2}-\frac{e-e^{-1}}{2}+\frac{1-1}{2}\\ & = & \frac{1}{e-e^{-1}}+e^{-1}\\ & = & \underline{\frac{2e^2-1}{2(e^2-1)}}\end{eqnarray}$$となる。
\((3)\) \(y = f(x)\)と\(y = g(x)\)は\(y = x\)に関して対称だから、\(f^{\prime}(a) = 1\)のとき、\(\displaystyle g^{\prime}(f(a)) = \frac{1}{f^{\prime}(a)} = 1\)であるから、\(f^{\prime}(a) = 1\)となるような\(a\)に対して、点\(P(a, f(a))\)と直線\(y = x\)との距離の\(2\)倍が求める\(PQ\)の最小値になる。\(\displaystyle f^{\prime}(a) = \frac{1}{\sqrt{a^2-1}}\)であるから、$$\begin{eqnarray}\frac{1}{\sqrt{a^2-1}} & = & 1\\ a^2-1 & = & 1\\ a & = & \sqrt{2}\ \ (a > 0)\end{eqnarray}$$である。したがって、点\(P(\sqrt{2}, \log{(\sqrt{2}+1)})\)として、この点と直線\(x-y = 0\)との距離は$$\frac{|\sqrt{2}-\log{(\sqrt{2}+1)}|}{\sqrt{1^2+1^2}} = \frac{\sqrt{2}-\log{(\sqrt{2}+1)}}{\sqrt{2}}$$となる。求める答えはこの\(2\)倍の\(\displaystyle \underline{\sqrt{2}(\sqrt{2}-\log{(\sqrt{2}+1)})}\)となる。
解説
逆関数の微分法については以下の関連問題の記事も参照。
\((2)\) \((1)\)をヒントにする。\(f(x)\)を微分するよりも\(g(x)\)を微分する方が簡単なのでそちらをターゲットにする。なお、一般に関数\(f(x)\)の逆関数\(g(x) = f^{-1}(x)\)のグラフ\(y = g(x)\)は\(y = x\)に関して\(y = f(x)\)と対称になる。
\((3)\) \((2)\)の過程から、直線\(PQ\)と直線\(y = x\)が直交するときに\(PQ\)の長さは最小になるはずである。
関連問題
2000年京都大学理系後期数学問題6 置換積分法と面積、tanの逆関数
2012年東京医科歯科大学前期数学問題3 逆関数の積分とはさみうちの原理
2018年東京医科歯科大学数学問題3 微分と逆関数
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