[math][東京医科歯科大学][確率]1998年東京医科歯科大学数学問題2

ferris wheel at night math
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問題

\(1\)辺の長さが\(1\)の正四面体\(ABCD\)の辺上を、いくつかの粒子が次の規則にしたがって毎秒\(1\)の速さで移動している。
規則\(1\ \ \) 各粒子は辺の途中で向きを変えることはなく、ある頂点を出発した粒子はちょうど\(1\)秒後に別の頂点に達する。
規則\(2\ \ \) 各粒子は頂点に達すると、その頂点を端点とする\(3\)辺のいずれかに、それぞれ確率\(\displaystyle \frac{1}{3}\)で進む。
規則\(3\ \ \) 粒子どうしは辺の途中で正面衝突しても互いにすり抜けてそのまま進むが、同一頂点に\(2\)個以上の粒子が同時に達すると、それらは瞬時に合体し、以後は\(1\)個の粒子として運動する。

今、ちょうど\(3\)個の粒子が存在し、それぞれ頂点\(A, B, C\)に同時に達したところである。\((n + 0.1)\)秒後にちょうど\(k\)個の粒子が存在する確率を\(P_k(n)\)とするとき、以下の問いに答えよ。ただし\(n\)は自然数とする。
\((1)\) \(P_1(1), P_2(2), P_3(1)\)を求めよ。
\((2)\) ちょうど\(n\)秒後に粒子が\(3\)個から\(2\)個になる確率\(Q(n)\)を求めよ。
\((3)\) \(P_2(n), P_1(n)\)を求めよ。

方針

総合的な確率の問題で、難しい。冷静に条件を詰めていけば取れるが試験場ではなかなか頭が熱くなり惑わされるだろう。合体した瞬間は点が何個かわかりにくいので\(n+0.1\)秒後などという表現で紛れの無いようにしたかったのだろうが、逆に混乱した人もいたかもしれない。

解答

\((1)\) \(P_1(1)\)は頂点\(A, B, C\)に存在する点が\(1\)秒後にすべて頂点\(D\)に移動する確率なので、\(\displaystyle P_1(1) = \left(\frac{1}{3}\right)^3 = \underline{\frac{1}{27}}\)である。\(P_2(1)\)を求める。頂点\(A, B\)にあった点が合体する場合を考える。頂点\(C\)で合体する場合と、頂点\(D\)で合体する場合が考えられる。
頂点\(C\)で合体する場合、頂点\(A, B\)にあった点が頂点\(C\)に移動する確率はそれぞれ\(\displaystyle \frac{1}{3}\)で、頂点\(C\)にあった点はどこに移動しても良いので、この場合の確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{3}\times 1 = \frac{1}{9}\)である。
頂点\(D\)で合体する場合、頂点\(A, B\)にあった点が頂点\(C\)に移動する確率はそれぞれ\(\displaystyle \frac{1}{3}\)で、頂点\(C\)にあった点は頂点\(A\)か\(B\)に移動するので、この場合の確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{3}\times \frac{2}{3} = \frac{2}{27}\)である。

以上から、頂点\(A, B\)にあった点が合体する確率は\(\displaystyle \frac{1}{9} + \frac{2}{27} = \frac{5}{27}\)である。合体する\(2\)つの点の選び方は\(3\)通りであるから、\(\displaystyle P_2(1) = \frac{5}{27}\times 3 = \underline{\frac{5}{9}}\)となる。\(P_1(1)+P_2(1)+P_3(1) = 1\)であるから、\(\displaystyle P_3(1) = 1-\frac{1}{27}-\frac{5}{9} = \underline{\frac{11}{27}}\)となる。

\((2)\) 最初に\(P_3(n)\)を求める。漸化式を立てると、\((1)\)から$$\begin{eqnarray}P_3(n+1) & = & P_3(1)\times P_3(n)\\ & = & \frac{11}{27}P_3(n)\end{eqnarray}$$である。\(\displaystyle P_3(1) = \frac{11}{27}\)から\(\displaystyle P_3(n) = \left(\frac{11}{27}\right)^n\)がわかる。以上から、\(n\geq 2\)のとき$$\begin{eqnarray}Q(n) & = & P_3(n-1)\times P_2(1)\\ & = & \frac{5}{9}\left(\frac{11}{27}\right)^{n-1}\end{eqnarray}$$である。これは\(n = 1\)でも成り立つので、\(\displaystyle \underline{Q(n) = \frac{5}{9}\left(\frac{11}{27}\right)^{n-1}}\)となる。

\((3)\) \(n+0.1\)秒後に\(2\)個存在していた粒子が、\((n+1)+0.1\)秒後に\(1\)個になる確率は、\(\displaystyle \frac{1}{3}\times \frac{1}{3}\times 2 = \frac{2}{9}\)であるから、\(n+0.1\)秒後に\(2\)個存在していた粒子が\((n+1)+0.1\)秒後に\(2\)個のままである確率は\(\displaystyle 1-\frac{2}{9} = \frac{7}{9}\)である。したがって$$\begin{eqnarray}P_2(n+1) & = & P_2(n)\times \frac{7}{9}+P_3(n)\times P_2(1)\\ & = & \frac{7}{9}P_2(n)+\frac{5}{9}\left(\frac{11}{27}\right)^{n}\end{eqnarray}$$である。この漸化式を解く。簡単のために\(\displaystyle \alpha = \frac{11}{27}\)とすると、$$P_2(n+1) = \frac{7}{9}P_2(n) + \frac{5}{9}{\alpha}^n$$である。変形して、$$\frac{P_2(n+1)}{{\alpha}^{n+1}} = \frac{7}{9\alpha}\cdot \frac{P_2(n)}{{\alpha}^n}+\frac{5}{9\alpha}$$となる。\(\displaystyle R_n = \frac{P_2(n)}{{\alpha}^n}\)と置くと、$$R_{n+1} = \frac{21}{11}R_n + \frac{15}{11}$$である。変形して、$$R_{n+1} + \frac{3}{2} = \frac{21}{11}\left(R_n+\frac{3}{2}\right)$$である。\(\displaystyle R_1 = \frac{P_2(1)}{\alpha} = \frac{5}{9}\cdot \frac{27}{11}= \frac{15}{11}\)であるから、$$\begin{eqnarray}R_n + \frac{3}{2} & = & \left(\frac{21}{11}\right)^{n-1}\left(R_1+\frac{3}{2}\right)\\ & = & \frac{63}{22}\left(\frac{21}{11}\right)^{n-1}\end{eqnarray}$$である。したがって、$$\begin{eqnarray}P_2(n) & = & R_n{\alpha}^n\\ & = & \left(\frac{63}{22}\cdot \left(\frac{21}{11}\right)^{n-1}-\frac{3}{2}\right)\cdot\left(\frac{11}{27}\right)^{n}\\ & = & \underline{\frac{3}{2}\left(\left(\frac{7}{9}\right)^{n}-\left(\frac{11}{27}\right)^{n}\right)}\end{eqnarray}$$である。また、\(P_1(n)+P_2(n)+P_3(n)=1\)であるから、$$\begin{eqnarray}P_1(n) & = & 1-P_2(n)-P_3(n)\\ & = & 1-\frac{3}{2}\left(\left(\frac{7}{9}\right)^n-\left(\frac{11}{27}\right)^n\right)-\left(\frac{11}{27}\right)^n\\ & = & \underline{1-\frac{3}{2}\left(\frac{7}{9}\right)^n+\frac{1}{2}\left(\frac{11}{27}\right)^n}\end{eqnarray}$$となる。

解説

\((1)\) \(P_1(1)\)は簡単。\(P_2(1)\)も冷静に考えれば必ず解けるである。\(P_3(1)\)は普通に求めると大変なので、解答のように\(P_1(1)+P_2(1)+P_3(1) = 1\)を用いて求める。

\((2)\) \(P_3(n)\)はすぐに分かるので、これを用いて\(Q(n)\)を求める。

\((3)\) 色々な解き方があるとおもうが、解答では漸化式を立てている。この問題のように時刻とともに状態が変化しているタイプの確率の問題では漸化式を立てることが有力な手段の一つである。$$P_2(n+1) = \frac{7}{9}P_2(n)+\frac{5}{9}\left(\frac{11}{27}\right)^n$$が出た後の漸化式の解き方は解答に詳しく記載した。ここでも\(P_1(n)\)は\(P_1(n)+P_2(n)+P_3(n)=1\)を用いて求める。この基本的な関係式を忘れると問題が急に難しくなることがあるので常に頭に入れておく。

結果を見ると、\(n\to \infty\)のとき\(P_1(n) = 1, P_2(n) = 0, P_3(n) = 0\)となっている。長い時間が経つと当然点は\(1\)個になるということで、感覚的にも納得できるだろう。

関連問題

1975年東京大学理系数学問題6 確率と期待値の漸化式
1991年東京大学前期理系数学問題1 確率と漸化式、対称性
1993年東京大学理系前期数学問題5 確率と漸化式、個別に考える
2000年東京医科歯科大学数学問題1 複素数平面と確率、漸化式
2007年東京医科歯科大学前期数学問題2 確率と座標平面、漸化式

関連リンク

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