[math][東京工業大学]2018年東京工業大学数学問題4

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問題

\(xyz\)空間内において、連立不等式$$\frac{x^2}{4}+y^2\leq 1, \ \ |z|\leq 6$$により定まる領域を\(V\)とし、\(2\)点\((2, 0, 2), (-2, 0, -2)\)を通る直線を\(l\)とする。
\((1)\) \(|t|\leq 2\sqrt{2}\)を満たす実数\(t\)に対し、点\(\displaystyle P_t\left(\frac{t}{\sqrt{2}}, 0, \frac{t}{\sqrt{2}}\right)\)を通り\(l\)に垂直な平面を\(H_t\)とする。また、実数\(\theta\)に対し、点\((2\cos{\theta}, \sin{\theta},0)\)を通り\(z\)軸に平行な直線を\(L_{\theta}\)とする。\(L_{\theta}\)と\(H_t\)との交点の\(z\)座標を\(t\)と\(\theta\)を用いて表わせ。
\((2)\) \(l\)を回転軸に持つ回転体で\(V\)に含まれるものを考える。このような回転体のうちで体積が最大となるものの体積を求めよ。

方針

いきなり\((2)\)を出題されると手も足も出ないが、\((1)\)が良いヒントになっている。

解答

\((1)\) \(l\)の方程式は\(x = z, y = 0\)である。この直線の法線ベクトル(のひとつ)は\((1, 0, -1)^{T}\)である。したがって方向ベクトル(のひとつ)は\((1, 0, 1)^{T}\)になる。\(H_t\)の方程式は$$\begin{pmatrix}1\\ 0\\ 1\end{pmatrix}\cdot \begin{pmatrix}x-\frac{t}{\sqrt{2}}\\ y \\ z- \frac{t}{\sqrt{2}}\end{pmatrix} = 0$$である。これを整理すると、\(x + z = \sqrt{2}t\)となる。また、\(L_{\theta}\)の座標は\((2\cos{\theta}, \sin{\theta}, z)\)と表すことができるが、\(L_{\theta}\)と\(H_t\)との交点は\(H_t\)上にあるから、$$2\cos{\theta}+z = \sqrt{2}t$$である。よって、\(L_{\theta}\)と\(H_t\)との交点の\(z\)座標は\(z = \underline{\sqrt{2}t-2\cos{\theta}}\)である。

\((2)\) \(-6\leq \sqrt{2}t-2\cos{\theta}\leq 6\)であるから、\((1)\)の点\((2\cos{\theta}, \sin{\theta}, \sqrt{2}t-2\cos{\theta})\)は\(V\)上の点である。点\(P_t\)と点\(\displaystyle \left(2\cos{\theta}, \sin{\theta}, \sqrt{2}t-2\cos{\theta}\right)\)との距離を\(d\)とすると、$$\begin{eqnarray}d^2 & = & \left(\frac{t}{\sqrt{2}}-2\cos{\theta}\right)^2+\sin^2{\theta}+\left(\frac{t}{\sqrt{2}}-(\sqrt{2}t-2\cos{\theta})\right)^2\\ & = & 2\left(\frac{\sqrt{2}}{2}t-2\cos{\theta}\right)^2+\sin^2{\theta}\end{eqnarray}$$である。これを\(\cos{\theta}\)についてまとめると、$$\begin{eqnarray}d^2 & = & 7\cos^2{\theta}-4\sqrt{2}t\cos{\theta}+t^2+1\\ & = & 7\left(\cos{\theta}-\frac{2\sqrt{2}}{7}t\right)^2-\frac{1}{7}t^2+1\end{eqnarray}$$である。\(|\cos{\theta}|\leq 1\)であり、\(\displaystyle 1 = \left|\frac{2\sqrt{2}}{7}t\right|\)となるのは\(\displaystyle t = \pm\frac{7\sqrt{2}}{4}\)のときである。したがって、\(d^2\)の最小値は以下のようになる。$$d^2 = \begin{cases}7+4\sqrt{2}t+t^2+1\ \ \left(\cos{\theta} = -1, -2\sqrt{2}\leq t\leq -\frac{7\sqrt{2}}{4}\right)\\ -\frac{1}{7}t^2+1\ \ \left(\cos{\theta} = \frac{2\sqrt{2}}{7}t, -\frac{7\sqrt{2}}{4}\leq t\leq \frac{7\sqrt{2}}{4}\right)\\ 7-4\sqrt{2}t+t^2+1\ \ \left(\cos{\theta} = 1, \frac{7\sqrt{2}}{4}\leq t\leq 2\sqrt{2}\right)\end{cases}$$したがって、\(l\)を回転軸に持つ回転体で体積が最小のものは、$$\begin{eqnarray}V & = & \int{d^2\pi dt}\\ \frac{V}{\pi} & = & \int_{-2\sqrt{2}}^{-\frac{7\sqrt{2}}{4}}{(t^2+4\sqrt{2}t+8)dt}+\int_{-\frac{7\sqrt{2}}{4}}^{\frac{7\sqrt{2}}{4}}{\left(-\frac{1}{7}t^2+1\right)dt}+\int_{\frac{7\sqrt{2}}{4}}^{2\sqrt{2}}{(t^2-4\sqrt{2}t+8)dt}\\ \frac{V}{2\pi} & = & \int_{0}^{\frac{7\sqrt{2}}{4}}{\left(-\frac{1}{7}t^2+1\right)dt}+\int_{\frac{7\sqrt{2}}{4}}^{2\sqrt{2}}{(t-2\sqrt{2})^2dt}\\ & = & \left[-\frac{t^3}{21}+t\right]_{0}^{\frac{7\sqrt{2}}{4}}+\left[\frac{(t-2\sqrt{2})^3}{3}\right]_{\frac{7\sqrt{2}}{4}}^{2\sqrt{2}}\\ & = & \frac{5}{4}\sqrt{2}\end{eqnarray}$$である。よって、求める体積は\(\displaystyle V = \underline{\frac{5\sqrt{2}\pi}{2}}\)となる。

解説

\((1)\) 直線\(ax+by = c\)があるとき、ベクトル\(\begin{pmatrix}a \\b\end{pmatrix} = (a, b)^T\)をこの直線の法線ベクトルという。なぜ法線なのかわかるだろうか?平面上のある点\((x_0, y_0)\)を通る直線上の点\((x, y)\)が、ベクトル\((a, b)^T\)と直交するとき、$$\begin{pmatrix}a\\ b\end{pmatrix}\cdot \begin{pmatrix}x-x_0\\ y-y_0\end{pmatrix} = 0$$である。整理するとこれは\(ax+by = c\)の形になる。平面上の直線は通る\(1\)点と、ベクトル\((a, b)^T\)が決まれば一意に定まる。これが法線ベクトルの由来である。空間上でも同様に、平面\(ax+by+cz = d\)があるとき、ベクトル\((a, b, c)^T\)はこの平面の法線ベクトルと呼ばれる。この平面上の任意のベクトルは、いずれもベクトル\((a, b, c)^T\)と直交する、すなわち、内積が\(0\)になる。

この事実は基本的であるが、意外に抜けやすい。意味が分かっていれば、式をたくさん立てなくても空間座標の問題を解くときに役に立つだろう。

\((2)\) 立体の概形を把握することは難しいので、\((1)\)をヒントに式で追求していく。\(H_t\)は\(l\)と垂直なので、\((1)\)の点と\(l\)との距離との最小値を\(l\)の周りに回転させ、積み上げれば題意を満たす立体を得ることができる。\(t\)の値によって場合分けが生じることに注意しなくてはいけない。解答の\(V\)を計算するところでは、対称性を利用して計算量を減らしている。たとえば、$$\int_{-2\sqrt{2}}^{-\frac{7\sqrt{2}}{4}}{(t^2+4\sqrt{2}t+8)dt}$$の計算では\(t = -t^{\prime}\)と置換すれば、$$\int_{\frac{7\sqrt{2}}{4}}^{2\sqrt{2}}{(t^2-4\sqrt{2}t+8)dt}$$と同じ値になることがすぐに分かる。

関連問題

1983年東京大学理系数学第6問 斜回転体の体積
1988年東京医科歯科大学数学問題3 空間座標と体積、パップス・ギュルダンの定理
1997年東京医科歯科大学数学問題3 \(y\)軸回りの回転体の体積
2020年東京工業大学数学問題4 三角関数と重心、斜回転体の体積
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関連リンク

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