[math][東京大学][確率]2024年東京大学理系数学第3問

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問題

座標平面上を次の規則(i), (ii)に従って\(1\)秒ごとに動く点\(P\)を考える。
(i) 最初に、\(P\)は点\((2, 1)\)にいる。
(ii) ある時刻で\(P\)が点\((a, b)\)にいるとき、その\(1\)秒後には\(P\)は
・確率\(\displaystyle \frac{1}{3}\)で\(x\)軸に関して\((a, b)\)と対称な点
・確率\(\displaystyle \frac{1}{3}\)で\(y\)軸に関して\((a, b)\)と対称な点
・確率\(\displaystyle \frac{1}{6}\)で\(y = x\)に関して\((a, b)\)と対称な点
・確率\(\displaystyle \frac{1}{6}\)で\(y = -x\)に関して\((a, b)\)と対称な点
にいる。
以下の問いに答えよ。ただし、\((1)\)については、結論のみを書けばよい。
\((1)\) \(P\)がとりうる点の座標をすべて求めよ。
\((2)\) \(n\)を正の整数とする。最初から\(n\)秒後に\(P\)が点\((2, 1)\)にいる確率と、最初から\(n\)秒後に\(P\)が点\((-2, -1)\)にいる確率は等しいことを示せ。
\((3)\) \(n\)を正の整数とする。最初から\(n\)秒後に\(P\)が点\((2, 1)\)にいる確率を求めよ。

方針

点\((a, b)\)について、\(x\)軸に関して対称な点は\((a, -b)\)、\(y\)軸に関して対称な点は\((-a, b)\)、\(y = x\)に関して対称な点は\((b, a)\)、\(y = -x\)に関して対称な点は\((-b, -a)\)である。

最後であるが、対称な点を\((p, q)\)とすると、次が成り立つ。$$\begin{cases} \displaystyle \frac{b + q}{2} & = & \displaystyle -\frac{a+p}{2}\\ \displaystyle \frac{q-b}{p-a} & = & 1\end{cases}$$二番目の式から\(q = p-a+b\)で、一番目の式に代入して、\(b + p-a+b = -a-p\)である。したがって、\(\displaystyle p = -b, q = -a\)となる。

以上から、\((2, 1)\)は\(1\)秒後には\((2, -1), (-2, 1), (1, 2), (-1, -2)\)にあり、\(2\)秒後には$$\begin{eqnarray}(2, -1) & \rightarrow & (2, 1), (-2, -1), (-1, 2), (1, -2) \\ (-2, 1) & \rightarrow & (-2, -1), (2, 1), (1, -2), (-1, 2) \\ (1, 2) & \rightarrow& (1, -2), (-1, 2), (2, 1), (-2, -1) \\ (-1, -2) & \rightarrow & (-1, 2), (1, -2), (-2, -1), (2, 1)\end{eqnarray}$$にある。\(3\)秒後には$$\begin{eqnarray}(2,1) & \rightarrow & \cdots \\ (-2, -1) & \rightarrow & (-2, 1), (2, -1), (-1, 2), (1, 2) \\ (-1, 2) & \rightarrow & (-1, -2), (1, 2), (2, -1), (-2, 1) \\ (1, -2) & \rightarrow & (1, 2), (-1, -2), (-2, 1), (2, -1) \\ (-2, -1) & \rightarrow & (-2, 1), (2, -1), (-1, -2), (1, 2) \\ (2, 1) & \rightarrow & \cdots \\ (1, -2) & \rightarrow & (1, 2), (-1, -2), (-2, 1), (2, -1) \\ (-1, 2) & \rightarrow & (-1, -2), (1, 2), (2, -1), (-2, 1) \\ (1, -2) & \rightarrow & \cdots \\ (-1, 2) & \rightarrow & \cdots \\ (2, 1) & \rightarrow & \cdots \\ (-2, -1) & \rightarrow & \cdots \\ (-1, 2) & \rightarrow & \cdots \\ (1, -2) & \rightarrow & \cdots \\ (-2, -1) & \rightarrow & \cdots \\ (2, 1) & \rightarrow & \cdots \end{eqnarray}$$となる。

解答

\((1)\) 上記から、\(P\)がとりうる座標は\((\pm 2, \pm 1), (\pm 1, \pm 2)\)である。ただし、複号は任意とする。

\((2)\) \(n = 1\)のとき、最初から\(n\)秒後に\(P\)が点\((2, 1)\)にいる確率と、点\((-2, -1)\)にいる確率はともに\(0\)である。最初から\(n\)秒後に点\((a, b)\)にいる確率を\(p_n((a, b))\)とすると、$$p_{n+1}((a, b)) = \frac{1}{3}p_n((a, -b)) + \frac{1}{3}p_n((-a, b)) + \frac{1}{6}p_n((b, a)) + \frac{1}{6}p_n((-b, -a))$$である。この式で\(a\)を\(-a\)に、\(b\)を\(-b\)に置き換えると、$$p_{n+1}((-a, -b)) = \frac{1}{3}p_n((-a, b)) + \frac{1}{3}p_n((a, -b)) + \frac{1}{6}p_n((-b, -a)) + \frac{1}{6}p_n((b, a))$$となる。したがって、\(p_{n+1}(a, b) = p_{n+1}(-a, -b)\)となり、最初から\(n\)秒後に\(P\)が点\((2, 1)\)にいる確率と、最初から\(n\)秒後に\(P\)が点\((-2, -1)\)にいる確率は等しい。

\((3)\) 点\(P\)は\(1\)秒ごとにそれまで自分のいた象限から違う象限に移動するので、\(n\)が奇数のとき点\(P\)は第一象限にはいない。\(n\)が偶数のとき、\(n = 2m\)と置く。\(p_0((2, 1)) = 1\)である。\((2)\)と同様に、$$\begin{eqnarray}p_{2m+2}((2, 1)) & = & \frac{1}{3}p_{2m+1}((2, -1)) + \frac{1}{3}p_{2m+1}((-2, 1)) + \frac{1}{6}p_{2m+1}((1, 2)) + \frac{1}{6}p_{2m+1}((-1, -2)) \tag{a}\label{a}\end{eqnarray}$$である。さらに、$$\begin{eqnarray}p_{2m+1}((2, -1)) & = & \frac{1}{3}p_{2m}((2, 1)) + \frac{1}{3}p_{2m}((-2, -1)) + \frac{1}{6}p_{2m}((-1, 2)) + \frac{1}{6}p_{2m}((1, -2)) \\ p_{2m+1}((-2, 1)) & = & \frac{1}{3}p_{2m}((-2, -1)) + \frac{1}{3}p_{2m}((2, 1)) + \frac{1}{6}p_{2m}((1, -2)) + \frac{1}{6}p_{2m}((-1, 2)) \\ p_{2m+1}((1, 2)) & = & \frac{1}{3}p_{2m}((1, -2)) + \frac{1}{3}p_{2m}((-1, 2)) + \frac{1}{6}p_{2m}((2, 1)) + \frac{1}{6}p_{2m}((-2, -1)) \\ p_{2m+1}((-1, -2)) & = & \frac{1}{3}p_{2m}((-1, 2)) + \frac{1}{3}p_{2m}((1, -2)) + \frac{1}{6}p_{2m}((-2, -1)) + \frac{1}{6}p_{2m}((2, 1))\end{eqnarray}$$である。これらを\eqref{a}に代入して、さらに\(p_n((a, b)) = p_n((-a, -b))\)を用いると、$$\begin{eqnarray}p_{2m+2}((2, 1)) & = & \frac{1}{3}\left(\frac{1}{3}p_{2m}((2, 1)) + \frac{1}{3}p_{2m}((-2, -1)) + \frac{1}{6}p_{2m}((-1, 2)) + \frac{1}{6}p_{2m}((1, -2))\right) \\ & & +\frac{1}{3}\left(\frac{1}{3}p_{2m}((-2, -1)) + \frac{1}{3}p_{2m}((2, 1)) + \frac{1}{6}p_{2m}((1, -2)) + \frac{1}{6}p_{2m}((-1, 2))\right) \\ & & + \frac{1}{6}\left(\frac{1}{3}p_{2m}((1, -2)) + \frac{1}{3}p_{2m}((-1, 2)) + \frac{1}{6}p_{2m}((2, 1)) + \frac{1}{6}p_{2m}((-2, -1))\right) \\ & & + \frac{1}{6}\left(\frac{1}{3}p_{2m}((-1, 2)) + \frac{1}{3}p_{2m}((1, -2)) + \frac{1}{6}p_{2m}((-2, -1)) + \frac{1}{6}p_{2m}((2, 1))\right) \\ & = & \left(\frac{1}{9} + \frac{1}{9} + \frac{1}{9} + \frac{1}{9} + \frac{1}{36} + \frac{1}{36} + \frac{1}{36} + \frac{1}{36}\right)p_{2m}((2, 1)) \\ & & \left(\frac{1}{18} + \frac{1}{18} + \frac{1}{18} + \frac{1}{18} + \frac{1}{18} + \frac{1}{18} + \frac{1}{18} + \frac{1}{18}\right)p_{2m}((-1, 2)) \\ & = & \frac{5}{9}p_{2m}((2, 1)) + \frac{4}{9}p_{2m}((-1, 2)) \tag{b}\label{b}\end{eqnarray}$$である。ここで、\(n\)が偶数のとき、\(p_{n}((1, 2)) = p_{n}((-2, 1)) = p_{n}((-1, -2)) = p_{n}((2, -1)) = 0\)であるから、$$\begin{eqnarray}p_{2m}((2, 1)) + p_{2m}((-1, 2)) + p_{2m}((-2, -1)) + p_{2m}((1, -2)) = 1\end{eqnarray}$$である。したがって、\(\displaystyle p_{2m}((2, 1)) + p_{2m}((-1, 2)) = \frac{1}{2}\)である。\eqref{b}に代入して、$$\begin{eqnarray}p_{2m+2}((2, 1)) & = & \frac{5}{9}p_{2m}((2, 1)) + \frac{4}{9}\left(\frac{1}{2} -p_{2m}((2, 1))\right) \\ & = & \frac{1}{9}p_{2m}((2, 1)) + \frac{2}{9} \\ \iff p_{2m+2}((2, 1))-\frac{1}{4} & = & \frac{1}{9}\left(p_{2m}((2, 1))-\frac{1}{4}\right)\end{eqnarray}$$とある。方針の記載から\(\displaystyle p_2((2, 1)) = \frac{5}{18}\)であるから、繰り返しこれを用いて、\(\displaystyle p_{2m}((2, 1))-\frac{1}{4} = \left(\frac{1}{9}\right)^{m-1}\left(p_2((2, 1))-\frac{1}{4}\right) = \frac{1}{36}\left(\frac{1}{9}\right)^{m-1} = \frac{1}{4}\left(\frac{1}{3}\right)^{2m}\)である。よって、$$\underline{ p_n = \begin{cases} 0\ (n\equiv 1 \pmod{2}) \\ \displaystyle \frac{1}{4}\left(1+\left(\frac{1}{3}\right)^n\right) \ (n\equiv 0 \pmod{2})\end{cases}}$$となる。これは\(n = 0\)でも成り立つ。

解説

東京大学で確率漸化式の問題が出題されるのは珍しいのかもしれない。対称性を利用する漸化式の問題で、意外に単純な形に片がつく。この手の問題では、「最終的な場合をすべて足すと\(1\)になる」ことを忘れてはいけない。

\(n \to \infty\)のとき、\(P\)は\(\displaystyle \frac{1}{4}\)の確率で点\((2, 1)\)にある事がわかる。

関連問題

1975年東京大学理系数学問題6 確率と期待値の漸化式
1994年京都大学前期文系数学問題4 確率と漸化式、7で割り切れる確率
2000年東京医科歯科大学数学問題1 複素数平面と確率、漸化式
2011年東京医科歯科大学前期数学問題1 確率と漸化式

関連リンク

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