[physics]速度

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座標平面とは何か?では物理学における座標系導入の動機について調べた。ニュートン力学が「xy平面上を運動する物体について、その運動を調べる」ものであることが分かり、デカルト座標上の点Pの座標が(x(t),y(t))と、時刻tの関数として表されることを見た。以下では速度について考察する。

速度とは何か

小学生の頃こんな問題を解かされた筈である。「A地点から、B地点までの距離が50kmだとする。太郎さんは車に乗ってA地点を出発し、2時間後、B地点に到着する。太郎さんの平均の速度は何か?」答えは、25km/hであるが、少し深く考えてみる。

瞬間の速度

上の答えで分かるのは、「平均の速度」のみであるという点に注意する。どういうことかと言うと、太郎さんが出発してから、例えば1時間後の瞬間、車がどのくらいの「速度」で走っているかは、全く分からないということである。車のメーターは60km/hを指しているかも知れない。あるいは、車は信号で止まっているのかも知れない。要するに、上で求めた答えというのは全体についての大局的な情報でしか無い訳である。我々が物体の運動について何かを知ろうという時、これは十分ではない。途中経過についてブラックボックスのままだからである。小学生とは違い、物体の運動についてより高度な手法を用いてより多くの情報を得る必要がある。小学校で習う

(平均の)速度=距離÷かかった時間

という定義が十分ではなかったのである。そのために不完全な形でしか情報が得られていない。

速度の定義

今まで習ったことは一度忘れ、ここで速度について定義しなおす。天下り的だが、速度の定義は以下のようになる。

定義:
時刻txy座標上の点Pの座標が(x(t),y(t))と表される時、点Pの時刻tでの速度vv=(dx(t)dt,dy(t)dt)である。上で述べたことは定義であり、人間がこうだと定めたものである。多少話がずれるが、数学や物理を学ぶ時は、「何が定義で何が定理なのか」を充分に意識することが肝要である。定義は人間がこれこれこうだと定めたものである。例えば,べクトルの内積でab=|a||b|cosθと言うのは、定理ではなく定義である。「何故こうなるのか分からない」というものでなく、覚えるものだ。ともかく、上のように速度を定義すると、非常に便利であることを見てみよう。

具体例

例えば、時刻tでの位置が座標平面上で(t+1,3t21)と表される点Pがある。この点の時刻tでの速度vはどのようになるか。答えは簡単で、t+1tで微分すると13t21tで微分すると6tだから、定義に従ってv=(1,6t)となる。小学校までの速度の定義だとこのような点の瞬間の速度を求めろと言われても手が出ない。我々は今までの速度の概念を拡張してより広範でより応用の効く概念を手にした。

べクトルとスカラー

上のようにして定義した速度は、べクトルである。つまり、普通の数とは違い、(1,6t)のように数の組として定義されている。対して、速さは次のように定義される。(dx(t)dt)2+(dy(t)dt)2

上の例だと、(1,6t)は速度、1+36t2は速さとなる。速度の大きさが速さという訳だ。大きさなのでこれはスカラー、つまり普通の数となる。一次元(直線上)では、速度の絶対値が速さとなる。

整合性

初めの例に戻る。太郎さんの乗った車の速度が一定であると仮定する。そのとき車は平面でなく直線上を動きので、速度をvとしてv=aとおける。ただし、aは定数である。これを時間tで積分して、x=at+Cなどとなる。ただしCは積分により現れる定数である。時間t=0で太郎さんは点Aにいたので、点Aを原点とするとa0+C=0、つまり、C=0となる。これからx=atとなり、t=2x=50なので、50=2a、つまりa=25を得る。こうして得たv=a=25が、小学生の頃に求めた答えと一致していることを確認してほしい。上の例は非常に煩雑である。何故簡単に小学校の頃のように、速度=距離÷時間と求めてしまわないのか。それは、この定義が非常に狭い範囲でしか使えないからである。つまり、速度=距離÷時間で定義された速度は、速度が一定の時にしか使えないのである。v=(1,6t)という点をよく見てみると、これは時間tによって変化する。t=0のときはv=(1,0)だし、t=20のときにはv=(1,120)となる。この点の場合、速度=距離÷時間という定義は何の意味もない。

最後に具体例を

最後に問題を解いて,理解を完全なものにしておこう。

問題

時刻tでの速度がv=(2t2,t6)で表されるxy平面上の点Pがある。時刻t=0に点Pは原点にあった。点Pの時刻tでの位置はどのように表されるか。

解答

2t2tで積分すると、2t33+Cであり、t6tで積分すると、t77+Dとなる。ただし、C,Dは定数である。t=0において、この値は共に0(点Pは原点にあったのだから)なので、C=D=0が分かる。よって、時刻tでの点Pの位置は,tの関数として、(2t33,t77)と表される。

まとめ

位置が時刻tの関数であると言うのは,速度が位置の時刻tによる微分として定義されているからである。次回は、速度をさらに微分すると何が現れるのかという素朴な疑問に対する解答を用意してみたい。

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