[math]1988年東京工業大学数学問題1

Table of Contents

問題

数列\(\{a_n\}\)を\(a_1 = 1, a_n = 1 + \frac{1}{n^2}{a_{n-1}}^2\)で定める。このとき、\(\lim_{n\to\infty}{a_n}\)を求めよ。

方針

一般項を求めようなどとしてはいけない。上から\(a_n\)を評価する。

解答

すべての自然数\(n\)に対して\(a_n\leq 2\)であることを数学的帰納法で示す。\(n=1\)の時は\(a_1=1\)だから成り立つ。\(n = k\)での成立を仮定すると、$$a_{k} = 1 + \frac{1}{k^2}{a_{k-1}}^2$$ $$\leq 1 + \frac{1}{k^2}2^2$$ $$\leq 1 + \frac{4}{2^2}$$ $$ = 2$$だから成り立つ。以上より、$$a_n = 1 + \frac{1}{n^2} {a_{n-1}}^2$$ $$\leq 1 + \frac{2^2}{n^2}$$ $$\to 1 (n\to\infty)$$であり、明らかに\(a_n\geq 1\)だから、\(\lim_{n\to\infty}{a_n} = 1\)となる。

解説

上手く評価して挟み撃ちの原理を使わなくてはならない。そこで注目するのが式の形で、もしも\(a_n\)を定数で押さえることが出来れば良い。そのために、最初にその定数を\(m\)とでもおいて、\(a_{n-1}\leq m\)とする。すると漸化式から$$a_n\leq 1 + \frac{m^2}{n^2}$$であるから、期待すべき不等式は$$1+\frac{m^2}{n^2}\leq m$$となる。左辺は\(n\)の減少関数で、\(n\geq 2\)だから、\(n=2\)の時にこの不等式が成り立つような\(m\)を探すと良い。すると、$$1 + \frac{m^2}{4}\leq m$$であり、変形して\((m-2)^2\leq 0\)となる。これを満たすのは\(m=2\)以外にはない。解答では唐突に\(2\)が出てきてビックリした受験生も多かったかもしれないが、こういったステップを裏で踏んでいる。

教科書レベルでは誘導がつけられており、自分で不等式を作ったことがない受験生も多いことだろうが、東京工業大学のような難関大学ともなると、評価は自分で行わなくてはいけない。そこが数学の難しいところでもあり、また面白いところでもある。素材自体はありふれているが、誘導なしで出題されていて、まるでどう料理するのかと聞かれているような東工大らしい良問である。

コメント

  1. […] 1988年東京工業大学数学問題1 はさみうちの原理1990年東京大学理系前期数学問題1 はさみうちの原理1994年京都大学後期理系問題6 部分積分法、積分の漸化式、((log{n})^n)の積分 […]

  2. […] 1988年東京工業大学数学問題1 はさみうちの原理1993年京都大学後期理系数学問題3 文字定数(cdots) […]

  3. […] 1961年度東京工業大学数学問題6 関数と極限1988年東京工業大学数学問題1 はさみうちの原理2019年東京大学理系数学問題5 微分、極限 […]

タイトルとURLをコピーしました