問題
\(O\)を原点とする座標平面上で考える。\(0\)以上の整数\(k\)に対して、ベクトル\(\overrightarrow{v_k}\)を$$\overrightarrow{v_k} = \left(\cos{\frac{2k\pi}{3}}, \sin{\frac{2k\pi}{3}}\right)$$と定める。投げたとき表と裏がどちらも\(\displaystyle \frac{1}{2}\)の確率で出るコインを\(N\)回投げて、座標平面上に点\(X_0, X_1, X_2, \cdots, X_N\)を以下の規則\((i), (ii)\)に従って定める。
\(\ \ \ \ (i)\)\(X_0\)は\(O\)にある。
\(\ \ \ \ (ii)\) \(n\)を\(1\)以上\(N\)以下の整数とする。\(X_{n-1}\)が定まったとし、\(X_n\)を以下のように定める。
\(\ \ \ \ \ \ \ \ \cdot\) \(n\)回目のコイン投げで表が出た場合、$$\overrightarrow{OX_n} = \overrightarrow{OX_{n-1}} + \overrightarrow{v_k}$$により\(X_n\)を定める。ただし、\(k\)は\(1\)回目から\(n\)回目までのコイン投げで裏が出た回数とする。
\(\ \ \ \\ \ \ \ \cdot\) \(n\)回目のコイン投げで裏が出た場合、\(X_n\)を\(X_{n-1}\)と定める。
\((1)\) \(N = 8\)とする。\(X_8\)が\(O\)にある確率を求めよ。
\((2)\) \(N = 200\)とする。\(X_{200}\)が\(O\)にあり、かつ、合計\(200\)回のコイン投げで表がちょうど\(r\)回出る確率を\(p_r\)とおく。ただし\(0\leq r\leq 200\)である。\(p_r\)を求めよ。また\(p_r\)が最大となる\(r\)の値を求めよ。
方針
動く方向は\(3\)方向しかないが、裏の出た回数で方向が変わる。裏の出る場所を固定し、どこで表が出るかを考えると先が見える。動く方向は裏の回数のみに依存し、表がどこで出たかは無関係である。
解答
表が出ることを\(\bigcirc\)、裏が出ることを\(\times\)と表す。例えば、\(N = 3\)で表表裏と出たことを\(\bigcirc\bigcirc\times\)などとする。また、\(\displaystyle \overrightarrow{a} = (1, 0), \overrightarrow{b} = \left(-\frac{1}{2}, \frac{\sqrt{3}}{2}\right), \overrightarrow{c} = \left(-\frac{1}{2}, -\frac{\sqrt{3}}{2}\right)\)とする。\(N\)回目の施行が終了し、\(\overrightarrow{a}, \overrightarrow{b}, \overrightarrow{c}\)の出た回数を順に\(p, q, r\)とする。\(X_n\)の位置は$$p\overrightarrow{a} + q\overrightarrow{b} + r\overrightarrow{c}$$と表すことができ、これが原点\(O\)にあるとき、$$\begin{cases}\displaystyle p-\frac{q}{2}-\frac{r}{2} = 0 \\ \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}(q-r) = 0\end{cases}$$となる。つまり、\(p = q = r\)が必要である。逆に、\(p = q = r\)でないとき、\(X_n\)は原点\(O\)にはない。
\((1)\) 上の議論から、表の出る回数は\(0, 3, 6\)のいずれかである。
\(\ \ \ (i)\) 表の出る回数が\(0\)回のとき、コインは全部裏で、$$\times\times\times\times\times\times\times\times$$となる。これは\(1\)通りである。
\(\ \ \ (ii)\) 表の出る回数が\(3\)回のとき、裏のコインは\(5\)枚で、これをまず最初に並べる。$$\times\times\times\times\times$$\(\overrightarrow{a}\)が入るのは、$$\uparrow \times \times \times \uparrow\times \times$$の上矢印のある\(2\)箇所のどちらかで、\(\overrightarrow{b}\)が入るのは、$$\times \uparrow \times \times \times \uparrow \times$$の上矢印のある\(2\)箇所のうちのどちらかで、\(\overrightarrow{c}\)が入るのは、$$\times \times \uparrow \times \times \times \uparrow$$の上矢印のある\(2\)箇所のうちのどちらかである。したがって、\(2^3 = 8\)通りである。
\(\ \ \ (iii)\) 表の出る回数が\(6\)回のとき、裏のコインは\(2\)枚で、これをまず最初に並べる。$$\times \times$$\(\overrightarrow{a}\)の入る場所は$$\uparrow \times \times$$の上矢印のある\(1\)箇所のみ、\(\overrightarrow{b}\)の入る場所は$$\times \uparrow \times$$の上矢印のある\(1\)箇所のみ、\(\overrightarrow{c}\)の入る場所は$$\times \times \uparrow$$の上矢印のある\(1\)箇所のみで、これは\(1\)通りである。
以上から、\(N = 8\)のとき\(X_N\)が原点にある確率は\(\displaystyle \frac{1+8+1}{2^8} = \underline{\frac{5}{128}}\)となる。
\((2)\) \((1)\)と同様に考える。\(r \equiv \pm 1 \pmod{3}\)のとき、\(p_r = 0\)である。\(r \equiv 0 \pmod{3}\)のとき、裏のコインは\(200-r\)枚で、これをまず最初に並べる。$$\times \times \cdots \times (200-r枚)$$\(\overrightarrow{a}\)の入る場所は、$$\uparrow \times \times \times \uparrow \times \times \times \uparrow \cdots \uparrow \times \times \times \uparrow \times \times$$の上矢印のある箇所である。これは、\(\displaystyle \frac{200-r}{3} = 66-\frac{r}{3} + \frac{2}{3}\)箇所であるから、\(\displaystyle 66-\frac{r}{3}+1 = 67-\frac{r}{3}\)箇所あり、ここから重複を許して\(\displaystyle \frac{r}{3}\)箇所の\(\overrightarrow{a}\)の入る場所を選ぶから、選び方は\(\displaystyle \begin{pmatrix}67-\frac{r}{3} + \frac{r}{3}-1 \\ \frac{r}{3}\end{pmatrix} = \begin{pmatrix}66 \\ \frac{r}{3}\end{pmatrix}\)である。\(\overrightarrow{b}\)の入る場所は、$$\times \uparrow \times \times \times \uparrow \times \times \times \uparrow \cdots \times \times \times \uparrow \times $$の上矢印のある箇所である。これも\(\displaystyle 67-\frac{r}{3}\)箇所あり、ここから重複を許して\(\displaystyle \frac{r}{3}\)箇所の\(\overrightarrow{b}\)の入る場所を選ぶから、選び方は\(\displaystyle \begin{pmatrix}66 \\ \frac{r}{3}\end{pmatrix}\)である。\(\overrightarrow{c}\)の入る場所は、$$\times \times \uparrow \times \times \times \uparrow \times \times \times \uparrow \cdots \times \times \times \uparrow$$の上矢印のある箇所である。これも\(\displaystyle 67-\frac{r}{3}\)箇所あり、ここから重複を許して\(\displaystyle \frac{r}{3}\)箇所の\(\overrightarrow{c}\)の入る場所を選ぶから、選び方は\(\displaystyle \begin{pmatrix}66 \\ \frac{r}{3}\end{pmatrix}\)である。以上から、\(r \equiv 0 \pmod{3}\)のとき、\(\displaystyle p_r = \frac{{_{66}{\mathbb{C}}_{\frac{r}{3}}}^3}{2^{200}}\)となる。答えは、$$\underline{p_r = \begin{cases}\displaystyle \frac{_{66}{\mathbb{C}}_{\frac{r}{3}}^3}{2^{200}} \ \ (r \equiv 0 \pmod{3})\\ \\ 0\ \ (r \equiv \pm1 \pmod{3})\end{cases}}$$となる。
\(p_r\)の最大値を求めるため、\(r = 3k\)とおく。ただし、\(k = 0, 1, \cdots, 66\)である。\(\displaystyle \begin{pmatrix}66 \\ k\end{pmatrix}\)の最大値を求めれば良い。$$\begin{eqnarray}\frac{_{66}{\mathbb{C}}_{k+1}}{_{66}{\mathbb{C}}_{k}} & = & \frac{66!}{(66-k-1)!(k+1)!}\cdot \frac{(66-k)!k!}{66!}\\ & = & \frac{66-k}{k+1}\end{eqnarray}$$である。\(\displaystyle \frac{66-k}{k+1} = \frac{67-(k+1)}{k+1} = \frac{67}{k+1}-1\)は\(k\)についての減少関数で、\(k = 0\)のときに\(66\)、\(k = 66\)のときに\(0\)となり、\(k = 32\)のときに\(\displaystyle \frac{34}{33} > 1\)、\(k = 33\)のときに\(\displaystyle \frac{33}{34} < 1\)となるから、$$\begin{pmatrix}66 \\ 0\end{pmatrix} < \begin{pmatrix}66 \\ 1\end{pmatrix} < \begin{pmatrix}66 \\ 0\end{pmatrix} < \cdots < \begin{pmatrix}66 \\ 33\end{pmatrix} > \begin{pmatrix}66 \\ 34\end{pmatrix} > \cdots > \begin{pmatrix}66 \\ 66\end{pmatrix}$$となる。よって、\(p_r\)を最大にする\(r\)は\(\underline{r = 3\times33 = 99}\)となる。
解説
裏が出ると方向が変わるいうところが嫌らしいが、表は他の表がどこで出るかに関係なく、裏の出た枚数で方向が決まることに気がつくと、一気に楽になる。すなわち、解答の\(\overrightarrow{a}\)は、他の\(\overrightarrow{b}\)や\(\overrightarrow{c}\)がどこで出るかに影響されず、裏のコインとの位置関係だけで決まるということである。
\(p_r\)が最大になる\(r\)は、パスカルの三角形を考えると、\(k = 33\)になることはすぐに分かる。解答のように比をとって\(1\)との大小で考えるのが良いだろう。
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